2018年7月の豪雨の項目では、事例を活用し、職員や住民との協力体制、データの管理方法に関する対策などを紹介している。
岡山県倉敷市の下水道部のケースでは、降雨情報などから、発災前に必要な体制を確保することの重要性を訴求。倉敷市水道部は2018年7月5日、職員25人が事前配備体制で職場に待機し、パトロールなどで状況把握を実施した。同年7月6日は通常業務も加え、交代職員40人が非常配備体制で事業所にとどまり、巡回などで現状の情報収集に務めた。
豪雨災害では、事前に天候の情報を入手していたことや昼間に対応案を検討できたため、職員不足による初動の遅れはなかった。
広島県沼田川流域下水道の事例は、道路崩壊に伴い下水管が流出したため、上流側の地区に広島県から東広島市を通じて下水道の使用自粛を要請したもの。
下水を下水管の放流箇所で、可搬式の濁水処理機により、この地区の日平均下水量程度の対処能力で簡易的に対応していたため、流入量の増加によるリスク回避を目的に自粛要請を行った。日頃よりさまざまなケースを想定し、自粛要請の使用機会について検討することを対策として示している。
豪雨によりさまざまな地域で発生した道路上に土砂が堆積し、マンホールの位置の特定を難しくしたケースは、下水道台帳のデータを電子化し、タブレット端末に搭載することで、紙特有のぬれて破れるという問題を解消。下水道台帳に変わる管きょ調査の有効な手段として提示した。
この他、豪雨時に設計図書や下水道台帳が浸水しないための対策として、安全な施設に保管することを推奨した。
下水道BCP策定マニュアル改定検討委員会の委員長を担当する明治大学 研究・知的戦略機構研究推進員の中林一樹氏は、「本日発表された意見をまとめ、2019年版のBCP策定マニュアルを最終的にどうするかについて、全体の確認を行う。今回、水害に関する内容をこのマニュアルに盛り込んだことで、分厚い資料になったが、今後、視認性を高めるレイアウトの検討に取り組んでいく」と語った。
2019年版の下水道BCP策定マニュアルの公表は、9月下旬もしくは10月初旬を予定している。
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