利根川下流河川事務所 施設管理課 課長の菊地隆氏は、堤防の外面の変状を容易に把握する技術へのニーズを解説した。
このテクノロジーが望まれる背景には、利根川下流河川事務所の管理エリアの堤体が、変形箇所の特定に時間を要することがある。さらに、これまでの地形調査では、穴を見つける際に人力による掘削や石灰の流し込みが必要で費用負担が大きいこともある。
「現場試行は利根川付近で通年で行う。ドローンで撮影した平常時と災害時の堤防の測量データを比較し、iPadといったデジタルデバイスで損害を受けた部分を修復後も確認できるシステムをイメージしている。茂った草の上からでも堤体の正確な断面を測定可能なことが求められる」(菊池氏)。
こういったニーズに対して、MMSやドクターヘリ、空撮などのビジネスを行う朝日航洋 商品企画部の白井正孝氏は、AR技術を活用した堤防表面の変状確認支援システムを訴求した。
このシステムは、LP、ドローン、MMS、衛生画像、ナローマルチなどの多様なプラットフォームで計測した3次元点群データをスマートフォン、タブレットといったデバイスのカメラ画面に重ねて撮影できるというもの。
スマートフォンといった小型端末やMMSに対応しているため、車や徒歩といったさまざまな利用形態で使える。色付き点群データを使用し、変形箇所を特定の色にすることで、現地で指定の地点を発見する時間を短縮する。
3次元点群データを直接用いるため、スムーズな地形情報の比較と3D情報を加工するコストの削減を後押しする。2シーズン以上の3次元点群データを利用することで、それらの情報の差分で経年変化に基づく変形のモニタリング評価が可能。2次元の平面図を併用すればGNSSに依存せずに、目標地点の割り出しが行えるため、3次元点群データの取得や運用は場所を選ばないという。
白井氏は「利根川下流河川事務所が抱える問題には、スマートフォンのカメラで対象エリアを過去の3D点群データと現在を重ね撮影し、変状を可視化することで解決する。2020年には次世代通信規格である5Gの商用サービスが開始されるため、クラウドによる大容量3次元データの通信が実用化される可能性も高く、さらに使用環境が改善されていく」と述べた。
現場試行は、関東地整が有する既存の画像を活用し出水前後の堤防付近の変化状況を見える化することを計画。対応する画像がない場合は、朝日航洋が、ドローンを用いて測量することも検討している。
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