日本では、これまでビジネスホテルタイプの客室面積10〜15平方メートルのシングルがメインだった。確かに統計でも、2015年までの客室タイプはシングルが半数近かったが、2016年以降は一転してダブル/ツインの割合が増えている。アジアから大勢訪れるインバウンド旅行者のうち、単身はわずか2割なことがその主な要因となっている。ホテルのターゲットをインバウンド対象にするのであれば、最近出始めている4人ぐらいが泊まれる40平方メートルほどのアパートメントホテルも含めて、ダブル以上を必然的に選択することが求められる。
また、「国内では4スターや5スターのアッパークラスホテルは50件ほどしかなく、現状での供給はビジネスホテルなどの宿泊主体型が87%を占め、アッパークラスのフルサービスホテルはたった5%しかない。だからこそ、価格競争になりかねない従来型の宿泊主体ではなく、インバウンドのニーズに応えられるアッパークラスホテルがこれからはブルーオーシャンになるだろう」と土屋氏は説く。
アッパークラスホテル同様に、ここ数年で話題に上ることも多い「ブティック・ライフスタイルホテル」は、画一的ではない付加価値を提供するホテル。独創的なコンセプトに基づき、高いデザイン性を持ち、宿泊にとどまらないロビーエリアなどで交流イベントもできる。外資系で言えばアンダーズ、IHGのホテル・インディゴやキンプトン・ホテルズ&レストランツといったブランドが相当する。海外ではこうした大手ホテルチェーンに属さないブランドも多数あり、2019年末に京都でアジア初オープンする「エースホテル」を筆頭に、今後は積極的な国内展開も予想される。
ブティック・ライフスタイルホテルの宿泊価格は2〜5万円以上で、宿泊客の満足度という観点では、マズローの欲求段階説と重ねると、自己実現を達成できるホテルと位置付けられる。逆に言えば、他のホテルには無い付加価値が提供されることによって、高い客単価が狙えるともいえる。
最後に2030年に向けて、土屋氏は、「全世界の海外旅行者数は年々増えており、2017年は13.6億人だた。交通輸送機関の充実や中間所得層の広がり、とくにアジア・パシフィックは伸びている。さらに、これらからは2019年ラグビーW杯、2020年東京オリンピック・パラリンピック、2025年大阪・関西万博、2027年のリニア中央新幹線の開業、さらには;まだ場所は決まっていないが、統合型リゾートといった宿泊需要を後押しするイベントが多数ある」と期待語った。
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