開発にあたり、一般的に制震装置の周期を制御するには、錘の支持材(つり材や積層ゴムなど)の剛性を調節することが必要とされているが、錘重量が数百t(トン)に達する大型TMDの支持材の剛性を変化させることは容易ではない。D3SKY-RCでは、錘の支持材と並行に設置したオイルダンパの抵抗力(減衰係数)を切り替えるだけで、TMDの周期を制御する全く新しい支持機構を採用し、この課題を解決した。
D3SKY-RCの基本構成は、錘、複数段の支持材、オイルダンパ、加速度センサー、コントローラー。新開発のアルゴリズムを実装したコントローラーが、センサーで取得する加速度を用いて、建物の振動周期を判定する。支持材と並行に設置したオイルダンパの減衰係数をわずかな電力で、セミアクティブ制御により、瞬時に切り替える仕組み。
オイルダンパには鹿島建設の約20年にも及ぶ豊富な実績があるセミアクティブオイルダンパHiDAXのノウハウを転用している。オイルダンパの発生力は、TMDに必要な減衰抵抗だけでなく、支持材の動きを制限する抵抗力としても作用し、“減衰係数の切り替え”のみで、TMDの周期調整が実現する。
性能試験では、錘重量40tの試験体を製作し、鹿島技術研究所の高性能3次元振動台「W-DECKER(ダブルデッカー)」で行い、オイルダンパの減衰係数切り替えによるTMDの周期調整機能、センサーやコントローラーの性能を確認した。
鹿島建設では、2013年に超高層建物用の超大型TMD「D3SKY」、2019年1月には中低層建物用のコンパクト型TMD「D3SKY-c」を開発。今回のD3SKY-RCがラインアップに追加されたことで、これまで適用実績がなかったRC造の超高層マンションや超高煙突などにも適用範囲が広がった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.