実証実験は、東急建設 相模原工場で実大試験体を施工し、3カ月にわたり、鉛直載荷試験を実施した。一般構法(木造校舎の構造設計標準:JIS A 3301)と比較すると、コスト約20%のダウンと約1カ月以上の調達工期短縮がもたらされた。
試験結果からは他にも、設計荷重(自重+積載荷重)が載荷されたときの弾性撓(たわ)みと、長期間にわたって載荷されたときのクリープ変位(時間変化による変形量)が、木造床構造の標準的なクライテリアを満たしていることを確認した。
モクタスでは現在、「規格流通材で木現(あらわ)しを可能とする準耐火木造柱」「界床・界壁の高遮音化技術」「塗料の改良による耐候性向上技術」の開発も進めており、中大規模の木造建築領域おける高いコストパフォーマンスと短工期に取り組んでいく。
モクタス創設の背景には、日本の国土は約3分の2相当が2500万ha(ヘクタール)が森林を占め、うち人工林が約4割となっていることがある。それらの人工林は、間伐など人の手が加えられることを前提に維持され、管理が行き届かなくなると木の成長は滞り、やがて森林のもつ土砂災害の防止機能や水源涵養機能といった公益的機能が損なわれ、生物の多様性にも影響をもたらすとされている。
現在、森林の蓄積は、戦後復興で植林された人工林を中心に毎年増加し、総蓄積は約49億m3(2012年3月現在)。とくに人工林はこの半世紀で約5.4倍にも達し、2020年時点には、本格的な利用可能期を迎える10齢級以上の人工林が約7割になると見込まれている。適正管理下の森から樹木を伐採して、木材として建築物に使用することは、森林サイクルを健全化することに限らず、再生可能資源の使用により化石資源使用量を削減することにつながり、持続可能社会の構築にも大きく貢献する。
森林は、空気中の二酸化炭素を吸収し炭素を貯蔵しているが、伐採・加工した木材そのものも、森林と同様の炭素貯蔵機能を保持。木材を建築物に利用すれば、吸収した炭素を固定し続け、地球温暖化防止に貢献する。
主要な建設資材の二酸化炭素排出原単位を比較すると、木材は、鉄やコンクリートなどの原材料よりも排出量が小さく、他構造から木造に置き換えることで、CO2の削減が期待される。
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