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» 2018年09月25日 13時00分 公開

Autodesk University Japan 2018:CIM×ARのインフラ維持管理、点検画像と変状情報を点群データ上に表示 (1/2)

建設コンサル最大手の日本工営は、ARとCIMモデルを活用したインフラの維持管理を行っている。CIMモデル上にMicrosoft HoloLensで取得した点検情報や画像を貼り付け、一目で以前の点検内容が分かる独自のシステムを構築した。

[石原忍,BUILT]

 オートデスクは2018年8月31日、建築・土木などの他分野でユーザー事例や最新ソリューションを紹介するセミナーイベント「Autodesk University Japan 2018」を東京都港区台場のグランドニッコー東京 台場で開催した。

 本稿では、土木向けで“点検”“維持管理”“AR”をキーワードにした「ARおよびDynamoによる構造物維持管理業務効率化」のセッションをレポートする。登壇者は日本工営 CIM推進センターの倉橋哲弘氏。

HoloLensで点検してARオブジェクトを取得、CIMモデルに反映

日本工営 CIM推進センター・倉橋氏

 国内の建設コンサルタントで売上高1位の日本工営は、年間5500件を超えるプロジェクトを受注している。最近では2016年に、BIM(Building Information Modeling)分野でヨーロッパで最先端の技術を保有する英国建築設計大手BDP社を買収してグループ会社化した。同社のノウハウを生かし、土木以外の建築領域でも、さまざまな建築物の構造設計業務などを展開している。

 得意とするインフラに関しては、2012年の「笹子トンネル天井板崩落事故」を筆頭に、老朽化による事故は毎年発生。直近の2018年8月にはイタリア・ジェノバでも高架橋が崩落し、インフラの維持管理は世界的な問題とされている。一方で建設業の技能労働者数は減少しており、構造的に10年後には現役を引退する60代が多く、将来を担う若年入職者の確保と育成が喫緊の課題となっている。

 インフラ維持管理では、現場での点検作業後に事務所での“2次元変状図”の作成が、煩雑で、現場から事務所までの間に撮影・記録位置を失念することが課題となっている。撮影角度やズームが点検ごとに異なっていると、変状の追跡比較が困難になるという点もある。

 日本工営では課題解決のため、AR技術を活用した「Fieldwork AR system(FARS)」を開発。ヘッドマウントディスプレイには「Microsoft HoloLens」を採用した。このシステムでは、GPSなどの位置情報にひもづけて情報を表示する「ロケーションベースAR」と、実空間の特徴点および風景を目印に端末カメラに表示させる「ビジョンベースARマーカレス型」の2つのAR技術を取り入れ、AR空間で直感的な点検記録作業を実現させた。

 AR表示のメリットは、前回記録した写真やメモの位置を素早く特定できる他、撮影方法および撮影位置も拡張現実により、現実の空間上に表示させることができる。これまでの様にどの写真がどの場所かを探す必要がない。

HoloLensを装着して行う点検方法

 作業工程は、ARオブジェクトの座標を固定するため、HoloLensのWorld Anchor機能で空間を登録。各ARオブジェクトはWorld Anchorの相対座標となる。登録オブジェクトは音声、写真、動画が選択でき、音声入力および写真・動画撮影と同時に、登録位置とともにARでの表示が可能。

 HoloLensで取得したデータは、Autodeskのプログラミングツール「Dynamo」を通して、CIMモデルへと受け渡しをする。Dynamoは、複雑形状の構造物が描け、属性情報付与の処理をプログラミングで行えるという利点がある。この手法により、従来は、設計図書、竣工図書、維持管理記録など、書類であればバラバラだったが、CIMによる維持管理であれば、必要な情報が一覧表示され、関連書類へのリンクでアクセス時間の短縮も見込める。

 ただ、CIMモデルへのデータ移行でハードルとなったのが、HoloLensは起動するたびに絶対座標が変化してしまうことと、1度に登録できる範囲が限られるため、複数エリアに分割して登録することが必要なことの2点。

 解決策として、点群データの上にHoloLensのデータを反映。点群データは、ライカジオシステムズ社レーザースキャナー「BLK360」で取得する。BLK360は、機器の制御や現場での点群データつなぎ合わせはiPad上で行える。

BLK360で取得したダムの点群データ
BLK360で取得したダムの監査廊(かんさろう)の点群データ
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