建機の遠隔操作を“5G”で効率化、大林組らが実証に成功情報化施工(1/2 ページ)

大林組、KDDI、NECは、5G(第5世代移動通信)を活用した建設機械の遠隔操作に成功した。5Gの活用によりオペレーターへ高精細映像が提供できるようになったことから、従来通信を利用する遠隔施工から15〜25%の効率改善があったという。

» 2018年02月19日 06時00分 公開
[松本貴志BUILT]

建設業界の課題を解決するかもしれない“5G”

 大林組、KDDI、NECは2018年2月15日、大林組東京機械工場(埼玉県川越市)で記者会見を開催し、5G(第5世代移動通信)を活用する建設機械の遠隔操作の実証実験に成功したと発表した。高速・低遅延な5Gにより、建機を遠隔操作するオペレーターへ現場周辺の高精細な映像が提供可能になり、従来の遠隔施工から15〜25%の効率改善を果たしたという。

遠隔操作される油圧ショベルが質量300kgのコンクリートブロックをつかむ(クリックで拡大)

 本実証は、総務省の技術試験事務「5G総合実証試験」の一環として実施されており、KDDIが本実証取りまとめと5Gのエリア設計、大林組が建機の遠隔操作システム開発、NECが5G通信機器の開発を担い、各社が得意としている領域で役割を分担している。

松永彰氏

 会見では、各社がそれぞれの役割から見た本実証のポイントを紹介。KDDIは、同社モバイル技術本部シニアディレクターの松永彰氏が、5Gの特長と本実証の概要を説明した。

 5Gは、2020年頃より各国で商用化が予定されている次世代モバイルネットワーク。現在一般的に普及している4Gと比較して、高速・大容量(20Gbps)、多接続(100万デバイス/km2)、低遅延(1ミリ秒)なことがメリットとなる。

5Gのメリット(クリックで拡大)

 今回の実証は、遠隔操作対象の油圧ショベルにオペレーターが奥行きを感じ取りやすい高精細な4K解像度3Dカメラと現場周辺を俯瞰できる2K解像度全天球カメラなど複数のカメラを取り付け、現場から約70メートル離れた遠隔制御室でオペレーターが撮影映像を確認しながら操作を行うというもの。

 5Gの高速・大容量と低遅延特性を最大限に活用することで、4K3D映像や複数の2K映像といった大容量データを現場から遠隔制御室へ高速に転送し、オペレーターの操作性向上に役立てた。

実証実験の概要(クリックで拡大)

 NECは、本実証において5G基地局と端末(同一装置を利用)、4Kビデオコーデックを提供。対応する周波数は28GHz帯で、最大300MHzの帯域幅を使用し、送信電力は最大2.4ワット。この基地局・端末では、約400素子という多素子アンテナの採用とを同社独自の「フルデジタル制御」によって、無線ビームの効率的な制御やアナログ無線回路の小型化・省電力化を可能にしたという。

左:5G基地局と端末の概要 右:フルデジタル制御における同社独自技術(クリックで拡大)
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