熟練工不足を人工知能で補うソフト開発、既に7割近くの操作行動を再現情報化施工

清水建設と名古屋大学は共同で、熟練オペレータの経験や技量が要求されるシールド機の操作に、人工知能(AI)機能を盛り込んだソフトの開発に取り組む。

» 2016年09月07日 06時00分 公開
[三島一孝BUILT]

 清水建設は名古屋大学と共同で、熟練オペレータの経験や技量に基づくシールド機操作をAI化するソフト開発に本格着手する。ビッグデータ解析を経て暫定的に構築した操作モデルでは、オペレータの実際の操作行動を7割近く再現できており、これを発展させてシールド機操作へのAI活用を目指す。

 建設業界の生産性向上は大きな課題となっている。建設各社は、施工の合理化を進めているが、機械化などのハード面が先行。これをロボット化や自律化などにつなげるためにはソフト面の技術開発が必須である。

 これらを背景に清水建設では、膨大な監視データに基づき実施される熟練オペレータのシールド機操作に着目。監視データと操作データを収集・評価した結果、AI化へ適用可能と判断し、行動分析の権威である名古屋大学未来材料・システム研究所 山本俊行教授とオペレータの操作ルールのモデル化に取り組むことにした。操作モデルの対象とする操作は、シールド機の推進速度制御と方向制御および掘削土砂の排出量制御である。いずれもシールド掘進における基本的な操作項目だが、熟練オペレータの経験・技量に頼っているのが現状である。

約70%の操作行動を再現

 シールド機の操作において、オペレータはシールド機の現在位置、掘進速度、カッター回転における負荷、カッター面に作用する土圧などの多種多様なデータを監視し、操作の判断材料にする。こうしたデータは従来の掘進管理システムがリアルタイムに収集・ストックしてきたが、オペレータによる操作行為はデータ化して蓄積していたわけではなかった。

 今回の共同研究では、まず操作行為を記録する仕組みを掘進管理システムに組み込み、データ収集を実施する。これにより、各種監視データの変化とオペレータの操作行動(操作判断)との関係をビッグデータ解析することが可能になる。その後、オペレータの思考の中に築かれている操作ルールをモデル化し、シールド機操作のAI化につなげる。

 ビッグデータ解析は、首都圏所在の当社シールド工事現場において、1本のシールドトンネルの発進から到達までの間、1秒間隔で収集した監視データとオペレータの操作データの関係について実施したもの。解析結果にもとづき暫定的に構築した複数の熟練オペレータの操作モデルでは、実際の操作行動を最大69.5%再現することができたという。清水建設では今後、名古屋大学と共同で本格的な解析に着手しモデルを進化させるとともに、操作データと掘進管理データのストックを進め、AIを活用したシールド機操作の実現を目指す。

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