本連載では、FMとデジタル情報に軸足を置き、建物/施設の運営や維持管理分野でのデジタル情報の活用について、JFMAの「BIM・FM研究部会」に所属する部会員が交代で執筆していく。今回は、東急コミュニティーで建物管理技術全般の研究/開発に携わってきた筆者が、技術研修センター「NOTIA」を舞台に2度にわたり挑戦したBIMをFM領域で2次活用し、BIM-FMプラットフォームを構築する試みを紹介する。
東急コミュニティーは建物総合管理を業としているが、筆者が所属するビル事業本部では、業務区分で見れば「PM(プロパティマネジメント)」「BM(ビルマネジメント)」「CM(コンストラクションマネジメント)」を業の柱としている。近年は、PFI事業などへの参加機会が増え、当社が施主的な立場になることも多く、FM(ファシリティマネジメント)領域の業務にも取り組んでいる。一方、当社とBIM(Building Information Modeling)の関係性は、多くの場合、維持管理・運用者/エンドユーザーの形を取ることが多い。
BIMは3D建物設計ワークフローの一手法だが、デジタルデータとして存在するため、筆者はそのデータを維持管理・運用段階でも有効活用できる可能性を感じていた。2004年には米国の国立標準技術研究所(NIST:National Institute of Standards and Technology)が「米国の建設産業における不適切な情報の相互運用に関するコスト分析」を発表し、“建設コストをコントロールする手法”としてBIMに言及した。2010年3月には国土交通省が「官庁営繕事業におけるBIM導入プロジェクト」の実施を表明したため、日本では2009年度を“BIM元年”と呼んでいる。
筆者は2010年当時、社内で技術統括組織を率いており、新たな建物管理技術全般について模索していた。2012年にはBIMソフトウェアのAutodesk Revitの入力や操作の研修を受講した。だが、図面の3D化という点に感銘を受けたものの、設計・施工での干渉チェックや工数管理が主な機能で、維持管理・運用段階での活用イメージはデジタルデータの転送による管理帳票類の作成を容易化する程度しか持てなかった。このタイミングで筆者とBIMの関係はいったん途絶え、しばらくは他の建物管理技術を追うこととなる。
近年の建物所有者は、建物維持保全やバリューアップを行うために、所有不動産に資産としての流動性や換金性を持たせる必要があった。1931年の「抵当証券法」施行から半世紀以上が経過した2000年には「特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律(SPC法)」や「証券投資信託法」が施行され、不動産業界の証券化(流動化)の基盤が整備された。
建物管理者はFM、PM、BM、CMなどの業務区分に関係なく、この流れに影響を受けた。建物バリューアップの手法としては、ZEB、環境認証などの省エネルギーへの取り組み、サイネージ、ICT設備などのデジタルインフラの整備、廃棄物を含めた建物資産の管理性向上、セキュリティ機能の向上などがしばしば検討され、その中でデジタルデータの存在感は年々増していた。
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