災害時に約189万戸の賃貸住宅を無償貸与 競合する大和ハウスと大東建託が災害支援協定を結んだ意義産業動向(1/3 ページ)

大和ハウス工業と大東建託の両グループ企業は、互いに保有している賃貸物件の情報を共有し、災害時に連携して支援にあたる協定を締結した。両社グループが管理する計約189万戸の賃貸住宅を生かし、被災した賃貸住宅のオーナーと入居者に無償で貸し出す他、備蓄品の提供、復旧用資材の配給など、さまざまな角度から支援していく。さらに平時でも、防災に関する講習会を全国各地で随時開催するなど手を携える。

» 2024年04月24日 08時19分 公開
[BUILT編集部BUILT]

 大和ハウスグループと大東建託グループは、両社グループが管理する賃貸住宅で、平時や有事の協業や情報共有を推進し、地域の防災力のさらなる強化と入居者が安心して暮らせる住まいを提供するため、2024年3月5日に災害時の連携と支援の協定を締結した。協定締結企業は、大和ハウスグループが大和ハウス工業、大和リビング、大和ハウス賃貸リフォームと、大東建託グループが大東建託、大東建託パートナーズ、大東建託リーシングの計6社。

大手2社のグループによる災害支援/防災の防衛網

「災害における連携及び支援協定」の締結式。大東建託 代表取締役 社長執行役員 竹内啓氏(左)、大和ハウス工業 代表取締役社長 芳井敬一氏(右) 「災害における連携及び支援協定」の締結式。大東建託 代表取締役 社長執行役員 竹内啓氏(左)、大和ハウス工業 代表取締役社長 芳井敬一氏(右) 提供:大和ハウス工業、大東建託

 2024年1月に発生した「能登半島地震」をはじめ、2020年7月に九州/中部地方を襲った「令和2(2020)年7月豪雨」、2016年4月に震度7を観測した「熊本地震」など、住家被害を伴う大規模災害が数年に一度のペースで多発している近年。気候変動の影響も大きく、度重なる台風や豪雨で、河川の氾濫(はんらん)や土砂災害が発生するなど、気象災害も激甚化している。突発的な被災により、家を無くした人たちが、長期にわたる避難生活を余儀なくされたり、経済的な不安を抱えたりするケースも珍しくない。

 一方、全国各地の土地や賃貸物件を管理している不動産/住宅業界の企業であれば、保有している住宅を生かしたさまざまな支援策が見込める。不測の事態にも柔軟に対応できれば、二次災害や三次災害も未然に防げる。既に有事を見据えた取り組みに注力し、被災者の生活再建を支援している会社も少なくない。

 その一例として、既に大和ハウスグループでは、緊急時に物流施設や工場を被災者の一時避難場所や支援物資の一時保管場所として提供する「連携協定」を全国各地の自治体と結んでいる。

 大東建託グループも2023年2月、防災支援の指針となる「防災ビジョン2030」を策定。ビジョンに基づき、被災時に食料や水といった備蓄品を配給したり、社用EV車を活用した電力の無償供給を行ったりする「ぼくラボステーション」の運営など、地域防災を平時と有事の両輪で展開。自治体との防災連携強化にも積極的に取り組んでいる。

 そうした防災に対する考えが一致している両社グループは2024年3月5日、それぞれが管理している賃貸住宅の情報を共有し合い、平時や有事の際に助け合う「災害における連携及び支援協定」を締結した。今後は、地域防災力のさらなる強化を掲げるとともに、入居者が安心して暮らせる住まいの提供を目的に、両社のグループ間で連携した取り組みを進める。

協定の全体像。平時/有事に関わらず互いの情報を共有し合う他、防災イベントも定期的に開催していく 協定の全体像。平時/有事に関わらず互いの情報を共有し合う他、防災イベントも定期的に開催していく 提供:大和ハウス工業、大東建託
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