2024年4月から始まる住宅・建築物の「省エネ性能表示制度」、そのポイントをおさらいZEB(1/3 ページ)

建築物の省エネ性能の周知を目的に、2024年4月からスタートする「建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度」。本稿では同制度の概要や、運用方法の概要などについて解説する。

» 2024年02月26日 09時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 政府が掲げる「2050年のカーボンニュートラル達成」や「2030年度までに温室効果ガスを46%削減」といった目標の実現に向けては、エネルギー消費の約3割を占める住宅・建築物分野での省エネの深掘り、再エネ導入の促進が急務となっている。

 そのためには、消費者・事業者(以下、消費者等)の建築物の省エネ性能への関心を高め、性能が高い建築物が選択されやすい市場環境を整備することの重要性が指摘されている。また、消費者等が建築物の省エネ性能を把握し、比較検討するためには、ラベル等により、分かりやすく情報提供することが求められる。

 このため国は、2022年6月に建築物省エネ法(建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律)を改正し、2024年4月から「建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度」を開始する。

省エネ性能表示制度の対象

 新たな省エネ性能表示制度は、2024年4月1日以降に建築確認申請を行う新築建築物、及びその物件が、それ以降に再販売・再賃貸される場合が対象となる。

図1.省エネ性能表示制度の対象 出典:省エネ性能表示制度

 これらの建築物の販売・賃貸事業者(売主、貸主、サブリース事業者を含む)は、そのエネルギー消費性能を表示するよう努めなければならないとされている。つまり現時点、表示は従来どおり「努力義務」であるが、建築物省エネ法の改正により、販売・賃貸事業者が告示に従って表示していない場合、国土交通大臣は事業者に対して、勧告・公表・命令をすることが可能となり、法の実効性が強化された。

 なお、販売・賃貸を事業として行っているか否かは、反復継続的に建築物の販売・賃貸を行っているか等を踏まえて判断され、個人が一度限り持ち家を売却する場合等は努力義務の対象外である。

省エネ性能表示の流れ

 省エネ性能表示制度では、省エネ性能ラベルとエネルギー消費性能の評価書がセットで発行される。

 設計者は、WEBプログラム(エネルギー消費性能計算プログラム)又は仕様基準(※住宅のみ)によって省エネ性能評価を行い、1.自己評価もしくは2.第三者評価の方法により、広告等への表示に用いる省エネ性能ラベルとエネルギー消費性能の評価書を発行・取得する。現在、自己評価ラベル発行プログラムの「試用版」が公開されており、正式版プログラムは3月に公開予定としている。

図2.省エネ性能表示制度の発行物 出典:省エネ性能表示制度

 当該省エネ性能ラベル等は、委託している仲介事業者等へ伝達し、仲介事業者等は省エネ性能表示制度ガイドラインに沿ってラベル画像等を広告に掲載する。また、商談時にはラベルと評価書を使用し、消費者へ説明することが望ましい行為と位置付けられている。

 よって、本制度において省エネ性能表示の努力義務が課されるのは販売・賃貸事業者であるが、その実現には、仲介事業者(不動産広告の広告主)やポータルサイト事業者等の幅広い事業者の協力が不可欠となる。

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