Safie GO 360の魚眼レンズは、水平視野角と垂直視野角のともに182度で、カメラ前面の全景を俯瞰(ふかん)して撮影する。仮に狭小地であっても、丸くゆがんでしまう魚眼カメラの映像を補正する「デワープ機能」で、焦点距離が近い対象物でも明瞭に映し出す。撮影した映像は、360度で上下左右に動かせる画角で撮られているため、過去映像で見る人によって建物や基礎部分などで見たいポイントが異なっても、拡大やスクロールで天井や床、配線、空調設備まで隅々を見返せる。閲覧時のUI/UXでも、「平面ではなく、ズームしながら現場にあたかもいるかのように奥まで見れるような映像体験を目指した」(渡辺氏)。
導入メリットとしては、現地での巡回を遠隔カメラで代替することで、移動時間の大幅削減となる。建物が密集した現場でも、躯体や基礎工事の質を鮮明に把握することで、高い施工品質や安全の確保にもなる。他にも、道路を含む周辺の交通や人の入退場をモニタリングして、建築資材の盗難防止に加え、映像共有で施主自身が施工工程の細部までを振り返り、施主や協力会社との信頼醸成にもつなげられる。
特殊な使い方では、屋内外を同時に映像に残したい場合は、屋外にSafie GO 360、屋内の確認したいポイントにはコンパクトサイズで通話機能も搭載する「Safie Pocket(セーフィー ポケット)」シリーズをそれぞれ設置すれば、現場内外を網羅して見える化できる。
360度カメラの需要を渡辺氏は、1〜2万台は潜在的にあるとし、建設業の2024年問題と「遠隔巡視」の本格始動、大阪・関西万博やリニア新幹線などの建設需要の拡大が追い風になると予測する。
このうち、遠隔巡視の本格始動とは、現状では人が現地に出向いたり、紙ベースだったりするアナログ手法に制限されてる「目視規制」「実地監査」「定期検査」「書面提示」「常駐専任」「対面講習」「往訪閲覧」が規制緩和される方針のこと。目視規制と実地監査には、「検査、点検、監査」「調査」「巡視、見張」の3つの業務が含まれ、2024年6月をめどに見直される予定で、Safie PocketシリーズなどのウェアラブルカメラやWeb会議システムでの代替が認められるようになる。「こうした課題に対し、映像データを起点に現場をデジタルツ化して、建設業界のスムーズなコミュニケーションや意思決定の実現を目標としている。Safie GO 360は、デジタルツイン実装の入り口となるプロダクトに成り得るツールだ」(渡辺氏)。
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