本連載では、総合人材サービス会社で建設業向けの人材サービスを展開するヒューマンリソシアが、独自に調査した建設業における人材動向を定期レポートとしてお届けする。建設業従事者の人材動向に関する実態を解明し、建設業各社の採用・定着に向けた戦略を考えるうえで少しでもお役に立てれば幸いである。今回は、2022年度と2023年度上半期の出来高と手持ち工事高の状況から、建設市場の動向を探った。
2022年度と2023年度上半期の「出来高」と「手持ち工事高」の状況から、建設市場の動向をた分析した。なお、出来高は国土交通省の「建設総合統計」、受注工事高は「建設工事受注動態調査」の最新データから集計している。
■本レポートの要旨
・2022年度の建設工事出来高は前年度比2.6%増の53兆2,819億円
・2023年度上半期は、手持ち工事高が前年を上回るレベルを維持しており、短期的には建設市場は堅調に推移
・ただし、出来高の増加率は停滞気味かつ受注高は前年を下回っていることから、中長期的には建設業の市場規模は伸び悩みが懸念される
国土交通省の「建設総合統計」から建設工事の出来高の推移をみると、2020年度/21年度と2年連続で前年度割れとなっていたが、22年度は53兆2819億円で前年度比2.6%増と増加に転じている(図表1)。
コロナ禍による影響もあり、20年度に大幅減となっていた民間工事が、21年度には同4.2%増、22年度は同3.6%増と増加に転じていることが大きく影響している。なお、公共工事は20年度に前年度比6.2%増と大幅に伸び、建設市場を底支えしたが、その反動もあってか21年度は同▲5.6%減と大幅に減少し、22年度は同1.1%増に回復をみせている。
※「出来高」とは契約済みの建設工事における請負金額のうち、施工が完了した部分に相当する金額分であり、施工高や完成工事高とおおむねね同様の意であり、建設業の売上高を示す
2023年度上半期で月次の出来高の推移は、4月は前年同月比5.7%増、5月は同6.0%増だったが、6月には同2.5%増に半減し、7月は同2.7%増、8月は同1.1%増、9月は同1.6%増と増加率は低下傾向にある(図表2)。
発注者別では、民間工事は4月の同4.3%増、5月の同4.2%増から6月は同2.2%増、7月は同1.6%増と低下し、8月には同▲0.3%減と減少に転じ、9月も同0.2%増と微増にとどまっている(図表3)。
公共工事は4月の同8.3%増から、5月は同9.6%増に増加したが、6月は同3.0%増と増加率は低下。7月は同4.6%増、8月は同3.5%増、9月は同4.0%増で推移している(図表4)。
このように、23年度上期の建設工事出来高は、前年同月を上回ってはいるが、徐々に増加率は低下し、特に民間工事が伸び悩んでいる。
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