ただ、AIには膨大なデータベースを検索することで得られる圧倒的な情報量があり、処理も高速で、分析の力も優れている。AIが備えるこうした能力は、アイデア創造のプロセスにも活用できる。横関氏は「アイデア創造のほぼ全てにAIは関わって支援できる」とした。
横関氏は、アイデア創造だけでなく、設計業務でもAIがプロセスのほぼ全てで有効に連携すると示した。設計のフローには多様な形があるが、前提条件の整理や分析、コンセプトの立案、コンセプトイメージの視覚化といった主要プロセスでAI活用が見込める。
しかし、現時点のAIでは次の段階での利活用は難しいようだ。現在、ネット上にはAIが作成した建築物の画像が多数公開されている。そのデータが設計案に使えるデータに使えればよいが、いまのAIにとっては難易度が高いという。
ちなみに、横関氏はBIMとAIの相性が抜群によいとする。BIMをベースにすると、AIが壁なら壁、床なら床を認識し、どんな性能があるかも分かるようになる。そのため、設計プロセス全体で解像度が上がることにもつながる。
横関氏は、「AIは全てに連携可能なので、プロセス全部を含めるならば、ぜひBIMをやっていただくべきだ」と話した。逆に捉えれば、BIMでなければ、この先、AIの能力を十分に発揮できないかもしれないとも言い換えられる。
横関氏は興味深いAIの試みとして、ChatGPTによる設計プロセスの処理を紹介した。
多くの方が知るように、ChatGPTでは話し言葉でAIに指示する。だが、ChatGPT側に回答者のペルソナを設定できることを知る人は少ないようだ。ユーザー側から提示した問題に対し、別の視点を持った専門家が回答することも可能になる。横関氏は「5人の専門家チーム」と表現し、どのようなことが可能になるか説明した。
講演では、専門家チームによるイメージ生成までのフローを示した。一般的な路地の画像をChatGPTに投げ、その特徴を分析させた。今回は、分析で得た特徴からコンセプトを構築し、修正を経て、コンセプトに沿ったイメージ生成までを解説した。
イメージ生成には画像生成AIを用い、文字でやりとりしていた内容をもとに、画像を生成させるためのプロンプト(命令文)が必要になるが、そのプロンプトもChatGPTで作成可能だ。
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