大東建託は2021年6月、埼玉県草加市で国内初のLCMM賃貸住宅を完成させた。集合住宅での実現に向け、広島県立大学と共同研究してLCMMの考え方を整理し、太陽光発電システムの効率アップと増設、製材などのバイオマス乾燥、エアコン効率向上などの取り組みを組み合わせて、集合住宅でのLCMMを実現させた。
こうした施策を業界に先んじて達成できたのは、同社がこれまでに業界で先進的な省エネ設備の導入に取り組んできたことが大きい。2010年に従来の単板ガラスに比べ、断熱性が二倍となる「Low-E複層ガラス」を標準導入したことを皮切りに、2015年にLED照明、2016年には高効率給湯器を標準導入した。2017年には日本初のZEH賃貸集合住宅も手掛けている。
そして、翌2022年には「ニューライズLCMM」として規格商品化を実現した。事業面では収益性にも気を配り、価格はZEH仕様の商品と同程度になるように設定。従来のZEH仕様の住宅と比較すると、太陽光パネルを増やしたことで屋根借り賃料が増え、収益性も向上している。
2022年度には国土交通省の「第1回サステナブル建築物等先導事業(省CO2先導プロジェクト2022)」、2023年度も「サステナブル建築物等先導事業(省CO2先導型)」に採択されるなど後押しする動きが続いており、今後も各地への展開を続けていく。
LCMM賃貸住宅の環境性能をさらに向上させた新たな賃貸住宅のモデル開発にも取り組んでいる。2023年9月には、エネルギーマネジメントシステム(EMS)を備えた次世代型賃貸住宅「ゼロカーボン賃貸住宅」を竣工させた。
ゼロカーボン賃貸住宅は、ウクライナ情勢などによる電気代高騰やEV需要の高まりを背景に、太陽光発電だけでなく、蓄電池や電気自動車などの先進技術を取り入れ、創った電気を効率的に管理するEMS機能を強化し、さらなる環境性能の向上を実現させている。
建物名称は東京都青梅市に建設した「ゼロカーボンハウス青梅」。ニューライズLCMM賃貸住宅の一環で整備し、敷地内には6台ある駐車場の全てで専用のEVコンセントを設け、EV充電ができるようにした。
さらに蓄電システムの一環として、太陽光で発電した余剰電力をRVに蓄電できる「V2H」を導入。夜間に放電することで、消費電力に充当して自家消費率の向上を達成している。EV充電が満杯になった場合は、補助蓄電としてクレイ型蓄電池も設けている。給湯設備には「おひさまエコキュート」を導入し、太陽光発電の余剰電力を用いてお湯を沸かせる環境も整えた。
これらの機能を束ねるEMS機能も開発し、太陽光発電や余剰蓄電を組み合わせて電気をできる限り自家消費する環境を整えた。停電発生時には自立運転し、災害に対しても強い性能を備える。冷蔵庫や液晶テレビ、携帯充電を非常時にも全て同時に動かせる。
電気の自給自足率は86.5%と高く、不足電力も木質バイオマスの再エネで調達して100%再生可能エネルギーで達成している。従来のLCMM賃貸住宅では、非再エネの買電や給湯器によるガスでCO2が発生しているといった課題があったが、今回の住宅ではCO2排出がゼロの建物がついに具現化した。
大東建託はこうした商品開発などをさらに研究し、今後もカーボンニュートラル社会の実現に向けた努力を重ねていく。
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