2000年以降、生産年齢人口減少の1.5倍以上にもなる急速なペースで技術者の減少が進行しており、年々増加する超重要インフラとの需給ギャップから、2030年には3割以上の設備でメンテナンスが成り立たなくなる危機が迫っている。
インフラ設備のメンテナンスやエンジニアリングサービスを提供するマイスターエンジニアリングは2023年9月25日、鉄道や電気など国内の「超重要インフラ(クリティカルインフラストラクチャ)」を支えるメンテナンス技術者を対象に、求職状況や就業実態を独自に調査したレポートを発表した。
同日には、マイスターエンジニアリング 代表取締役社長 平野大介氏が会見を開き、調査結果を受けて、メンテナンス技術業界への若年新規流入者増や定着に向けた「業界課題」への対策などを提言した。
今回で第二回となる調査レポートによると、技術職就業意向者のうち3人に2人が「メンテナンス技術業界への就業」を検討さえしたことがない状態にあること、メンテナンス技術者業界に対して求職者が持つイメージとメンテナンス技術者の就業実態との間に大きな乖離(かいり)があることなどが判明した。
【就業選択肢としての認知不足】
【「働き方」面の必要以上のネガティブイメージ】
【技能習得に対する「壁」イメージ】
超重要インフラとは、国民生活や経済活動の基盤となるインフラのうち、他で代替することが困難で、機能が停止もしくは低下すると社会に大きな混乱を招くと見込まれるものを指す。日本政府では、情報通信、金融、航空、空港、鉄道、電力、ガス、政府・行政サービス、医療、水道、物流、化学、クレジット、石油の14分野を位置付けている。
ここのところ頻発する通信設備や金融機関のATMによる障害発生、鉄道の電気設備トラブルなど、重要なライフライン系の障害は、復旧が極めて困難で、対応に時間を要するほど利用者の生活や経済活動に深刻な被害をもたらす。
しかし、近年では、電力インフラの「ラストワンマイル」とされる「自家用電気工作物」の設置件数が、再エネの普及や事業用施設の増加により、電力関連設備はむしろ増加傾向にあるなど、新たなインフラが次々に建設される一方で、人口減少や高齢化などに伴った超重要インフラのメンテナンス技術者の人材不足は深刻の一途をたどり、このままのペースが続けば、技術者数は2030年には2000年比で3分の2(▲26万人)に、2045年には同半分以下(▲40万人)の大幅減が予測されている。
そのため、わずか7年後の2030年には3割以上、2045年に50%以上の設備でメンテナンスが成り立たなくなる「2030年クライシス」を迎える危機的な状況にあることは、2023年4月に人材の需要サイドを調査したマイスターエンジニアリングの第一回調査レポート「2030年クライシスに陥る『超重要インフラ』メンテナンス人材不足調査レポート」で示されている。
今回の第二回となる調査は、人材の供給サイドにフォーカス。2030年クライシス回避に向け、最重要事項となる「人材確保」の課題を特定すべく、若年求職者と現従事者を対象にリサーチした。
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