「超重要インフラ」の維持管理が崩壊する2030年クライシス 人材確保に向けたマイスターエンジの提言スマートメンテナンス(1/4 ページ)

2000年以降、生産年齢人口減少の1.5倍以上にもなる急速なペースで技術者の減少が進行しており、年々増加する超重要インフラとの需給ギャップから、2030年には3割以上の設備でメンテナンスが成り立たなくなる危機が迫っている。

» 2023年09月26日 05時29分 公開
[石原忍BUILT]

 インフラ設備のメンテナンスやエンジニアリングサービスを提供するマイスターエンジニアリングは2023年9月25日、鉄道や電気など国内の「超重要インフラ(クリティカルインフラストラクチャ)」を支えるメンテナンス技術者を対象に、求職状況や就業実態を独自に調査したレポートを発表した。

 同日には、マイスターエンジニアリング 代表取締役社長 平野大介氏が会見を開き、調査結果を受けて、メンテナンス技術業界への若年新規流入者増や定着に向けた「業界課題」への対策などを提言した。

 今回で第二回となる調査レポートによると、技術職就業意向者のうち3人に2人が「メンテナンス技術業界への就業」を検討さえしたことがない状態にあること、メンテナンス技術者業界に対して求職者が持つイメージとメンテナンス技術者の就業実態との間に大きな乖離(かいり)があることなどが判明した。

■本レポートの要旨

 

【就業選択肢としての認知不足】

  • メンテナンス技術職は従事者の4人に3人が満足と答える「住めば都」
  • 一方、技術職就業意向者のうち3人に2人が「メンテナンス技術業界への就業」を検討さえしたことがない状態

【「働き方」面の必要以上のネガティブイメージ】

  • 技術職就業意向者は就業先決定において特に「サステイナブルな働き方ができるか」を重視する一方、メンテナンス技術業界のイメージとして特に「イレギュラーな働き方」「肉体的にハードな環境」というネガティブイメージが実態以上に強い

【技能習得に対する「壁」イメージ】

  • メンテナンス技術者としての「技能習得」に関して「専門知識がないと難しい」と 3 人に1人が答え、実態以上に壁を感じ、検討に至っていない
  • 特に今後は魅力的な人材プールとなる「文系学生」「非技術職就業中の若年転職希望者」で顕著

2030年には3割以上の超重要インフラ設備でメンテナンスが崩壊

マイスターエンジニアリング 代表取締役社長 平野大介氏 マイスターエンジニアリング 代表取締役社長 平野大介氏

 超重要インフラとは、国民生活や経済活動の基盤となるインフラのうち、他で代替することが困難で、機能が停止もしくは低下すると社会に大きな混乱を招くと見込まれるものを指す。日本政府では、情報通信、金融、航空、空港、鉄道、電力、ガス、政府・行政サービス、医療、水道、物流、化学、クレジット、石油の14分野を位置付けている。

 ここのところ頻発する通信設備や金融機関のATMによる障害発生、鉄道の電気設備トラブルなど、重要なライフライン系の障害は、復旧が極めて困難で、対応に時間を要するほど利用者の生活や経済活動に深刻な被害をもたらす。

 しかし、近年では、電力インフラの「ラストワンマイル」とされる「自家用電気工作物」の設置件数が、再エネの普及や事業用施設の増加により、電力関連設備はむしろ増加傾向にあるなど、新たなインフラが次々に建設される一方で、人口減少や高齢化などに伴った超重要インフラのメンテナンス技術者の人材不足は深刻の一途をたどり、このままのペースが続けば、技術者数は2030年には2000年比で3分の2(▲26万人)に、2045年には同半分以下(▲40万人)の大幅減が予測されている。

図版は全てマイスターエンジニアリング提供

 そのため、わずか7年後の2030年には3割以上、2045年に50%以上の設備でメンテナンスが成り立たなくなる「2030年クライシス」を迎える危機的な状況にあることは、2023年4月に人材の需要サイドを調査したマイスターエンジニアリングの第一回調査レポート「2030年クライシスに陥る『超重要インフラ』メンテナンス人材不足調査レポート」で示されている。

 今回の第二回となる調査は、人材の供給サイドにフォーカス。2030年クライシス回避に向け、最重要事項となる「人材確保」の課題を特定すべく、若年求職者と現従事者を対象にリサーチした。

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