さらに、人を検出可能になれば、動画から危険事象を抽出して、危険な状態にある人がいないか、危険な状態につながる動きをしている人がいないかなどの情報と関連付けることで、現場の状況をより詳細に把握できるようになり、建設現場の安全管理に役立てられます。そこで、ヘルメットに画像認識されやすいように模様や符号を付けて、YOLOを適用して検出する方法も研究されています※4。高速性やリアルタイム性に優れたYOLOは、人や機械が移動して作業する建設現場で用いる物体検出手法として有望です。
他にも、防災や環境保全など多様な場面で、物体検出の応用が進められています。
防災面では、災害や事故などが発生した場合は、安全確保のため、道路を通る車両の通行規制をしなければなりません。通行規制の業務は、屋外で長時間にわたるため、担い手である交通誘導員の確保が問題となっています。
そこで、文献5の「深層学習による物体検出を用いた通行規制支援システムの開発」※5では、AIによる物体検出によって遠隔で通行車両の車種を分類することで、通行規制を支援するシステムを開発しています。
社会的に問題となっている投棄された廃棄物の検出にも、AIによる物体検知が用いられています。下図は、将来の廃棄物の収集のロボットによる全自動化を視野に、リアルタイムでの廃棄物の検知を試みている例です※6。
また、文献7の「UAVと画像認識AIによる河川巡視を補う地上画像の特徴量とその利用法検討」※7では、UAVによる画像から、廃棄物の検出を行っています。リアルタイムで廃棄物を検出することで、不法投棄の監視なども可能となると考えられます。
水害対応では水位の監視が重要です。文献8の「YOLOv5を用いた赤外画像の解析による水位計測システムの開発」※8では、水面から突き出ている柱を物体検出で検知することで、水位を計測しています。水害は夜間でも発生しますから、赤外画像にYOLOを適用しています。下図のように、夜間でも柱を検出して水位監視することが可能であることが分かります。
画像からの物体検出は、インフラに関するいろいろな分野で幅広い応用を持っています。特に、YOLOなどの手法によって、物体検出のリアルタイム性が高まっており、工事現場のリアルタイムな監視やUAVの動画からの異常検出などが実現されつつあります。さらに、環境問題や防災などの幅広い領域への適用も期待されています。
★連載バックナンバー:『“土木×AI”で起きる建設現場のパラダイムシフト』
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