大林組は、コンクリート橋の拡幅工事で、PC鋼材やコンクリートの数量低減により拡幅部分の重量を従来の60%に抑えられる工法「PCワイダー」を開発した。今後は、PCワイダーを、高速道路のインターチェンジやジャンクションの増築、車線数を増設する橋梁(きょうりょう)拡幅工事に適用することで、環境負荷を軽減し、交通への影響を最小限に抑えるとともに、施工コストの低減を図る。
大林組は、コンクリート橋の拡幅工事で、PC鋼材やコンクリートの数量低減により拡幅部分の重量を従来の60%に抑えられる工法「PCワイダー」を開発したことを2022年9月30日に発表した。
コンクリート橋の拡幅工事で、既設部と拡幅部を一体構造とする際には、構造上の問題で、拡幅部に大きな引張力が生じてひび割れなどが発生するため、床版とそれを支えるコンクリート桁に、あらかじめPC鋼材により圧縮する力(圧縮応力)をかけるプレストレストコンクリート(PC)が多く採用されている。
しかし、従来の工法では、十分な圧縮応力を確保するために多くのPC鋼材が必要で、桁も大型化していた。
そこで、大林組は、コンクリート橋の拡幅工事で、PC鋼材やコンクリートの数量を減らせるPCワイダーを開発した。
PCワイダーは、U型のプレキャスト部材で桁を構築し、床版との接合部にコンクリート使用量を低減する「スリムファスナー」を採用することで、PC鋼材やコンクリートの使用数量を低減し、桁と床版の重量を従来の約60%まで抑えた。加えて、桁と床版のプレキャスト化により、交通規制期間を従来の約30%まで短縮するとともに、材料の運搬にかかる車両数の縮減を達成し、CO2排出量も削減する。
具体的には、プレキャスト部材であるU型の桁は、事前に圧縮力をかけるプレテンションと、桁の連結時にかけるポストテンションの2種類を場所によって使い分けることで、一般的な桁よりもPC鋼材を減らし、桁のサイズを小さくする。
また、既設床版との接合部にはスリムファスナーを活用し、耐久性を確保するとともに、コンクリートの使用量をカットすることで、拡幅部の重量を従来工法の約60%まで減少させ、荷重を支える既設下部工への影響を抑えられる。
なお、工場で分割して製造したプレキャスト部材を現場に搬入して架設するため、架設機械を小型化することが可能、PC鋼材やコンクリートの数量低減と合わせてコストダウンが図れる。
さらに、従来の工法では、拡幅部をコンクリート打設で施工する場合に、打設後6カ月間程度の養生期間を確保してから、接合部を施工していたが、PCワイダーでは、部材をプレキャスト化することで、現場での打設作業が不要となり、架設後に連続して既設橋との接合作業に移れる。
そのため、車線規制期間を従来の約30%に短縮し、道路利用者への負担を軽減するだけなく、鉄筋や生コンの材料を搬入する車両数を縮減することでCO2排出量削減にも貢献する。
使用する部材に関して、桁は小型化することで、桁高の低い既設橋でも同じ桁高で拡幅が実現し、多様な桁高や桁断面、構造形式に使え、さまざまなコンクリート橋に適用できる。
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