大林組は、トンネル工事で使用されるシールドマシンカッタービットの摩耗状況を色と匂いで知らせる摩耗検知ビットを開発し、実用化した。今後は、色と匂いによる摩耗検知ビットをシールドトンネル工事に適用し、トラブルの未然防止を図り、高品質なインフラの早期整備を推進する。
大林組は、ロボット工学が専門の東京大学大学院新領域創成科学研究科 福井類准教授協力から協力を得て、トンネル工事で使用されるシールドマシンカッタービットの摩耗状況を色と匂いで知らせる摩耗検知ビットを開発し、実用化したことを2022年9月29日に発表した。
シールド工法では、多数のカッタービットを装備したカッターを回転させることで地盤を切削する他、カッタービットは掘進に伴い摩耗するが、摩耗の進行に気付かず掘進を続けると、カッタービットやカッターの損傷により掘進不能となる。解決策として、電気の導通により把握する導通式を用いる方法や油圧の低下により把握する油圧式の摩耗検知ビットを採用して摩耗状況を把握している。
しかし、上記の方式は、摩耗情報をシールドマシン内に伝達するためのケーブルや配管が必要なだけでなく、とくに小口径シールドマシンでは、配置スペースの制約で多数の摩耗検知ビットを装備することが困難で、ビットの摩耗が想定以上に進行していることがある。
そこで、大林組は、カッタービットの摩耗量が設定値に達すると、染料や香料を地山に噴出させ、掘削土砂に付着した色や匂いで摩耗状況を把握する方式の摩耗検知ビットを開発した。
今回の方式は、周囲の作業員に色と匂いで摩耗情報を伝えるため、シールドマシンから離れた位置でも確かめられ、カッターの健全度を容易に調べられる。
さらに、染料や香料を噴出する機構をカッタービット付近に集約することで、摩耗検知ビット装備用のケーブルや配管が不要となり、多数の摩耗検知ビットを装着可能。これにより、多くのカッタービットにおける摩耗状況を把握して、より正確な評価を実現している。
具体的には、掘削土砂に付着した色は、ベルトコンベヤー、ずり鋼車、土砂ピットなどに位置する作業員が見られ、匂いはシールド坑内に点在する作業員が嗅覚で気付ける。
加えて、色や匂いを確認するための機器は不要なため、想定より摩耗の進行が早く、カッタービットに異常が発生した場合でも、早期に把握し、応じられる。なお、使用される色には、染料に蛍光塗料を利用し、ベルトコンベヤーやずり鋼車上にUVライトを照射後、撮影した画像を分析することで、専用の機器を用いて見える化する。
一方、匂いについては、香料の溶媒にエタノールなどの有機溶剤を活用し、坑内の空気中に含まれる有機溶剤の成分を計測することで、専用の機器で可視化することに対応している。
また、摩耗検知ビットを配置するスペースの制約がないため、同一あるいは異なる円周上に複数の摩耗検知ビットを取り付けられる。
なお、搭載場所や摩耗量の設定値に合わせて、異なる染料や香料を使用することで、排出される色や匂いを基に、異常があるカッタービットの位置と摩耗量を区別することができる。これにより、カッターの健全度をより正確に評価するため、カッタービットに起因するトラブルを未然に防止し、シールド掘進工程を確保する。
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