【独自分析】男女の賃金格差開示の義務化に向けて、建設業がやるべきことは何か?建設業の人材動向レポート(44)(1/2 ページ)

本連載では、ヒューマンリソシアが運営する「建設HR」が独自に調査した建設業における人材や市場動向について、さまざまな観点で毎月レポートを発表している。今回は、男女の賃金格差の開示を義務付けた女性活躍推進法の改正省令について解説する。

» 2022年09月08日 10時00分 公開

 国内では、常時雇用する従業員が301人以上の企業を対象に、男女の賃金格差の開示を義務付ける女性活躍推進法の改正省令が2022年7月8日に施行された。今回は、改正内容について解説するとともに、建設業における対応策のポイントを紹介する。

今回の改正で情報開示の必須項目が追加に

 女性活躍推進法では、「女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供」として、情報開示の必須項目は8項目の中から1項目の選択とされていたが、今回の改正で「男女の賃金の差異」が必須項目として追加された。

 男女の賃金の差異の公表方法については、男性労働者の平均賃金に対する女性労働者の平均賃金を割合(パーセント)で示すこととされ、「全労働者」「正規雇用労働者」「非正規雇用労働者」の区分での公表が必要となった。

 初回の情報公表は、施行後、最初に終了する事業年度の実績を、その次の事業年度の開始後、おおむね3カ月以内に公表すると明示しており、3月決算企業の場合は2023年6月をめどに実績を公表することが必須となる。

<女性活躍推進法における情報公表項目>

  • 「女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供」

※以下の1〜8の8項目から1項目選択と、新設された9の項目は選択必須

  1. 採用した労働者に占める女性労働者の割合
  2. 男女別の採用における競争倍率
  3. 労働者に占める女性労働者の割合
  4. 係長級にある者に占める女性労働者の割合
  5. 管理職に占める女性労働者の割合
  6. 役員に占める女性の割合
  7. 男女別の職種または雇用形態の転換実績
  8. 男女別の再雇用または中途採用の実績
  9. 男女の賃金の差異(選択必須)

 

  • 「職業生活と家庭生活との両立」

※従来通り、以下の7項目から1項目の選択

  1. 男女の平均継続勤務年数の差異
  2. 10事業年度前およびその前後の事業年度に採用された労働者の男女別の継続雇用割合
  3. 男女別の育児休業取得率
  4. 労働者のひと月当たりの平均残業時間
  5. 雇用管理区分ごとの労働者のひと月当たりの平均残業時間
  6. 有給休暇取得率
  7. 雇用管理区分ごとの有休休暇取得率

 上記は厚生労働省のリーフレットを参照のこと。

 

業種平均との比較で自社の位置付けを確認することが重要

 今回の法律改正に対応するには、前段の通り、まずは自社の「全労働者」「正規雇用労働者」「非正規雇用労働者」について、男性労働者の平均賃金に対する女性労働者の平均賃金の割合を算出して把握する必要があるが、人事データをしっかり管理している企業にとっては、それほど難しいことではないだろう。

 重要なのは、法律改正の目的が、女性がより力を発揮できる環境整備を進めることにあると理解し、目的達成のための対策を講じることだ。そのためには、男女の賃金差異について自社のデータと業種平均を比較分析するなど、自社の位置付けを確認するとともに、差異が業種平均より大きい場合には、要因を探っていくことが不可欠。

建設業の男女の賃金差異は、全業種平均を若干上回る

 ここで、厚生労働省の2021年度「賃金構造基本統計調査」のデータを使用し、一般労働者※1における男女の賃金差異を業種別に算出したところ、「建設業」は71.7%であり、全業種平均の70.6%を若干上回っていることが分かった(図表1)。男女の賃金差異が最も大きいのは「金融業・保険業」の56.6%で、差が最も小さいのは「情報通信業」の77.0%だった。

※1 一般労働者:常用労働者のうちパートタイム労働者以外の労働者

【図表1 業種別の一般労働者男女の賃金の差異】 出典:厚生労働省「令和3年度賃金構造基本統計調査」より建設HR 編集部が作成
       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.