施工中の攪拌翼先端位置を高い精度で確認できる新たな計測システム、安藤ハザマら地盤改良(1/2 ページ)

安藤ハザマは、システム建設や青山機工とともに、大深度地盤改良工の出来形や品質リスクの低減、施工精度向上をサポートする「大深度先端位置計測システム」を開発し、実際の工事に適用して有効性を確認した。

» 2022年03月03日 09時00分 公開
[BUILT]

 安藤ハザマは、システム建設や青山機工とともに、大深度地盤改良工の出来形や品質リスクの低減、施工精度向上をサポートする「大深度先端位置計測システム」を開発したことを2022年2月7日に発表した。

ケーシングロッドに装着されたジョイント部の無線化に成功

 見えない地中での施工となる地盤改良工事では、これまでオペレーターの経験に基づき施工機械の姿勢などを管理していた。しかし、深さ40メートルを超えるような大深度の地盤改良工事では、削孔軌道が正規の位置からずれると、出来形だけではなく支持力、変形抑制、遮水といった地盤改良の目的を達成できない恐れがあった。

 解決策として、攪拌翼先端の削孔軌道をリアルタイムかつ高精度に計測管理するだけでなく、供用中の埋設構造物に近接して削孔を行う工事では所定の離隔を維持しながら施工する技術が求められている。

「深層混合処理工施工状況(DCS工法)」 出典:安藤ハザマプレスリリース

 そこで、安藤ハザマは、システム建設や青山機工と共同で大深度先端位置計測システムを開発した。大深度先端位置計測システムは、地盤改良工のうち相対攪拌式深層混合処理工法(DCS工法)※1を対象にしており、高精度傾斜計と水中無線機能を搭載し、これまで計測することができなかった施工中の攪拌翼先端位置を高い精度で確かめられる。

※1 相対攪拌式深層混合処理工法(Deep Cement Stabilization、DCS工法):固化材(セメント系スラリー)を地盤内に吐出しながら土壌と攪拌することより最大径2.5メートルの大口径改良体を築造する地盤改良工法。攪拌翼の内翼と外翼が互いに逆回転することで攪拌性能が高く均質な改良が可能

 このため、実際の施工位置と計画位置のずれや既設構造物との離隔をリアルタイムに管理する他、2016年に安藤ハザマが開発した「杭・地盤改良施工情報可視化システム(3Dパイルビュワー)※2」に大深度先端位置計測システムを連携させることで、あらゆる施工情報(例:電流値、スラリー流量、回転数、貫入速度など)をリアルタイムにオペレーターと工事関係者が共有することが可能となり、施工上のリスク低減や施工管理の効率化にも貢献する。

※2 杭・地盤改良施工情報可視化システム(3Dパイルビュワー):施工中の位置情報(GNSS)や施工情報(電流値、固化材量、回転速度など)を3次元で可視化するとともに、クラウドを通じてリアルタイムに関係者間で共有するシステム。施工仕様の管理や日報作成、施工記録の整理など業務の効率化が可能

 具体的には、今回のシステムは、深層混合処理機のケーシングロッド内部に設置した2軸傾斜計と一連の通信装置により、操作中のオペレーターと工事関係者が攪拌翼の先端位置情報をリアルタイムに共有する。

 各ケーシングロッド(1本当たり10メートル)は、傾斜計や通信基盤、バッテリーを備えた収納ボックスを搭載し、2方向の傾斜を測る。取得した傾斜データは、ケーシングロッド内に取り付けられた通信ケーブルとケーシングロッドのジョイント部にあるアンテナを介した無線通信で、順次上部のケーシングロッドにマルチホップ通信※3で配信される。

※3 マルチホップ通信:無線を搭載した各計測器にデータの中継機能を持たせることで、バケツリレー式にデータの転送を繰り返し、電波が直接到達する範囲の外にある端末との通信を可能にする技術

 加えて、深層混合処理機の最上部に取り付けられた通信装置は常に地上に出ており、そこから有線でオペレーター室に設置するデータ処理専用端末に転送され、ロッド長さと傾斜データから先端位置を計算し可視化する。このように、従来困難とされていたケーシングロッドのジョイント部における無線化に成功したことで、ケーシングロッドの脱着作業に影響を受けることなく、安定したデータ通信が可能となった。

「深層混合処理工施工状況(DCS工法)」 出典:安藤ハザマプレスリリース
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