大都市圏オフィス需要調査2020秋からは、オフィス環境の安全面に対する評価が二極化していることも読み取れた。具体的には、全体のうち約60%の企業が「オフィスは安全」と評価している。一方で、残りの約40%は「安全ではない」と評した。石崎氏は、安全面について「ファシリティマネジメントの観点からのアプローチが重要だ」と述べる。
付け加えで、「本来は密を避ける他、ソーシャルディスタンスや衛生管理などを徹底すべきだが、一部に不安を抱えたまま、ある程度仕方なく出社させているケースもあるのではないか」と私見を語った。
また、「テレワークによって生産性が上がる」と評価した企業は全体の約30%で、約50%は「生産性が上がらない」と答えた。石崎氏は、「まだ無理やり在宅勤務をしている状況が多分に含まれているため」と分析した。
「テレワークの効率が上がらない」という評価が多かった背景には、「マネジメントが難しい」「ペーパーレスが困難」「職種などによって可否があり不公平」「ハンコ対応が残っている」などの課題がある。石崎氏は、「コロナ後もテレワークが定着していくが、足元での課題は根強い」と警鐘を鳴らす。
セミナー中盤では、大都市圏オフィス需要調査2020秋の話から一度脱線し、ザイマックス不動産総合研究所が2020年9月に、首都圏のオフィスワーカーを対象に行った「首都圏オフィスワーカー調査2020」のリサーチ結果に触れた。
首都圏オフィスワーカー調査2020によれば、毎日出社しているオフィスワーカーは全体の約40%で、完全にテレワークになっている人は約6%しかいないことが判明した。過半数となる残りは、テレワークと出社の両方を使い分けていることが分かった。
出社の理由としては「オフィスでしかできない業務がある」という意見が最も寄せられた。「出社とテレワークのバランスは、理想的な状況にあるとはまだまだ言えない」(石崎氏)。
テレワークの頻度に関しては、週に半日以下しかしていない人と週に4日を超えている人が多い実態が見られた。職種別では、総務、人事、経理、一般事務のようなバックオフィス業務を担う人が出社を多くする傾向があった。
一方、対象のオフィスワーカーからは「週に半分程度はテレワークをしたい」というコメントが多く届いた。「業種や職種、家族や家庭の環境、副業など個人の働き方が多様化していく中で、それぞれに合った(出社の)頻度が見えてくるのでは」(石崎氏)。
オフィスワーカーの働き方を2019年と2020年で比較すると、在宅勤務をメインにテレワークの導入が進み、サテライトオフィスの導入率に関しても2019年は約5%だったが2020年は15%と3倍に増大した。併せて、フレックスタイム制度の採用率も伸長した。
しかし、環境整備に関して対象のオフィスワーカーからは、在宅勤務の不満として「運動不足」「オン/オフの切り替えが難しい」「コミュニケーション量の減少」といった意見が寄せられた。こういった不満が精神的なストレスとなり、業務効率に悪影響を与えるという。
石崎氏は、「(日本の住宅環境を踏まえると)在宅(勤務)だけではなかなかやりづらい面がある。(サテライトオフィスなどの)サードプレースの整備が進むことが有用と考えている」とした。
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