東京商工リサーチは、建設会社などを対象に、2020年2月〜2021年3月にわたり新型コロナウイルス感染症の影響について調査した。リサーチの結果によれば、前年の同じ月と比べて売上高が減少した「減収企業率」は、緊急事態宣言下の2020年5月が最も深刻で84.6%の建設会社が減収となり、収益が半減した会社は33.0%に達した。
東京商工リサーチは、建設会社などを対象に、2020年2月〜2021年3月に毎月1回インターネットによるアンケートを行い、全14回分を分析して、新型コロナウイルスの影響を調査し、リサーチの結果を2021年3月31日に発表した。
調査結果によれば、「新型コロナウイルスの発生は、企業活動に影響を及ぼしているか」と対象会社に尋ねたところ、新型コロナの影響が広がり始めた2020年2月の第1回アンケートでは、「既に影響が出ている」と回答した企業は全体の5.8%(87社)だった。さらに、62.3%(932社)の企業は「影響はない」と答えていた。一方、全業種では、第1回調査で「既に影響が出ている」は22.7%(2806社)で、当初は建設業への影響は軽微だった。
しかし、2021年3月の第14回アンケートで、「新型コロナウイルスの発生は、企業活動に影響を及ぼしているか」と建設会社に聞いたところ、「影響が継続している」と答えた会社は全体の47.1%(559社)を占め、「影響が出たがすでに収束した」は8.9%(106社)にとどまった。
同年3月の調査で、「影響はない」は7.3%(87社)となり、「現時点で影響は出ていないが、今後影響が出る可能性がある」は36.5%(433社)だった。これまで影響を受けていない企業も43.8%存在し、業界内で二極化している。
「前月売上高は、前年同月を“100”とすると、どの程度だったか」と対象会社に質問したところ、2020年2月の増減収は拮抗し、売上高が半減した企業は全体の3.4%(344社中12社)だった。しかしながら、同年3月は減収企業が65.0%(518社中337社)に達し、緊急事態宣言が発令された同年4月には79.3%(981社中778社)となり、同年5月は84.6%(756社中640社)に到達した。同年5月は売上高が半減した企業が全体の33.0%(250社)となり、緊急事態宣言によるサプライチェーンの分断も業績悪化に影響を与えた。
緊急事態宣言が解除された2020年6月以降は、減収企業が徐々に減少し、同年8月は減収企業が全体の約70%となった。2回目の緊急事態宣言が発令された2021年1月は、減収企業が72.0%(544社中392社)で、同年2月は73.8%(474社中350社)と1回目の緊急事態宣言下と同じような減収企業の急増はみられなかったが、約7割の建設業者で売上減が1年続いており、経営体力の疲弊が懸念される。
業種別では、ゼネコンなどの「総合工事業」における減収企業率※1は、2020年2月が50.9%(163社中83社)だったが、同年5月には82.4%(285社中235社)と8割を超えた。同年10月は63.4%(178社中113社)に減少したが、2021年2月には73.1%(164社中120社)と再び右肩上がりで推移した。
※1 減収企業率:前年の同じ月と比べて売上高が減少した企業の全体における割合
内装工事や鉄骨工事などを扱う「職別工事業」の減収企業率は、2020年3月に76.4%(119社中91社)に至った。資材の納入遅れや顧客の計画見直しが影響したとみられ、他の2業種より減収企業率が高かった。
、管工事や電気工事などを行う「設備工事業」の減収企業率は、2020年2月に50.0%(110社中55社)となり、同年3月には53.8%(169社中、91社)に到達した。同年4月に78.8%(270社中213社)と急増した後、他の2業種と同様に減少したが、同年11月に再び増加するなど不安定な状況が続いている。
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