要除却認定は、管理組合の申請に基づいて公共団体が認定する。マンションの敷地売却は、除却を行うが建て替えは行わない。通常は、民法に基づき区分所有者の全員合意が必要だが、マンション建て替え法によって、要除却認定を受けるとマンションの敷地売却事業の合意要件が緩和され、全区分所有者の5分の4の合意で可能となることがある。
また、要除却認定を受けると、建て替え後のマンションの容積率にも緩和措置がある。これは行政庁の許可により、容積率を緩和していく制度だが、宿本氏によれば、5分の4必要な建て替えの合意要件は緩和されないので注意が必要とのことだ。
従来、耐震性不足のマンションを対象としていた要除却認定だが、今回の法改正で以下、4つの対象が追加された。
1.外壁・外装材などが剥離し、落下の怖れがあると判断されるもの
2.火災への安全性基準に適合しないもの(1955年以降に建築基準法で強化された新しい防火基準に適合しないマンション)
以上、2つが要除却認定されると、敷地売却制度と容積率特例の対象となる。
また、
3.給排水管の劣化による損傷腐食で衛生上問題がある恐れがあるもの
4.バリアフリー化されてないもの
上記の2つは要除却認定されても敷地売却制度の対象とはならないが、容積率特例の対象となる。
今回の法改正で新設した制度として、宿本氏は次に敷地分割事業を挙げた。今後、急増が見込まれる団地型マンションでの建て替え円滑化のための手法で、団地の複数棟ある住棟全てで建て替えを進めるのではなく、一部の棟は建替えずに、その他の棟を建替えたり敷地売却したりしていこうという手法に当たる。
民法ではやはり区分所有者全員の同意が必要となるが、マンション建て替え法で「特定要除却認定」に承認されると、これも5分の4の合意で敷地分割が可能となり、分割後の街区で建て替えや敷地売却が行えるようになる。
敷地分割時事業の具体的な進め方については、分割を希望する街区・住棟の管理組合で合意の上で、特定要除却認定を申請し、認定を受ける。次に、残る団地の分も含む団地全体の区分所有者5分の4の合意を得て敷地分割を行う。その後、分割された街区の区分所有者5分の4の合意を得て、マンション建て替えや敷地売却事業の実施という新たなフェーズに進む。宿本氏は、敷地を共有する9棟270戸の住宅団地という仮の事例を設定して説明を進めた。
当該住宅団地のA街区4棟120戸は既に耐震改修を終えており、当然ながら、建て替えの意向は無い。一方で、B街区5棟150戸は耐震性が不足しており、耐震改修を行うよりも建て替えたいとの意向でまとまった。ならば、B街区のみ建て替えるのが現実的だろう。
しかし、B街区の建て替えを集約化・高層化して余剰地を売却し、事業採算性を高めたいとなると、敷地分割しなければ余剰敷地売却は難しい。従来は、こうしたニーズを実現するにはA街区も含めた全員合意が必要だったが、今回の法改正で特定要除却認定により、5分の4合意に要件を緩和して、敷地分割のハードルを下げることができるのだ。
マンション建て替え法は2022年の施行を目指し、2021年中に、必要となる政令や省令、告示などの改正を行っていく計画だ。要除却認定の4つある基準の詳細は、各所と連携しながら技術的に検討を進めており、さらに学識経験者も招いた検討会においてり基準を決めていく予定だ。
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