本連載では、ヒューマンタッチ総研が独自に調査した建設業における人材動向をさまざまな観点からレポートしている。今回は、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」をベースに、建設技術者の給与動向を調査した。
今回は、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」から建設技術者の給与動向について最新情報での分析を紹介する。この調査は統計法による基幹統計であり、主要産業に雇用される労働者について、その賃金の実態を労働者の働く産業分野、雇用形態、就業形態、職種、性、年齢、学歴、勤続年数、経験年数別などを明らかにするため、年1回実施されている。
主要産業の年間賃金総支給額※1の推移を見ると、建設業は2013年に製造業と全産業平均を上回った(図表1)。その後は、製造業以上に高いペースで増加し、2019年には550万1000円となって、製造業の507万5000円、全産業平均の500万7000円を大幅に上回っている。
情報通信業の611万4000円と比較すると、まだ低い水準ではあるが、給与水準の改善はかなり進んできていると言える。
※1 年間賃金支給総額=決まって支給する現金給与額×12+年間賞与その他特別給与額で算出
細かく業種別に2019年の年間賃金総支給額を見ると、総合工事業が550万4000円、職別工事業が493万9000円、設備工事業が572万9000円と、職別工事業が製造業や全産業平均を下回るレベルで、職別工事業における給与水準の低さが問題点として指摘できる(図表2)。
業種別・年齢層別の年間賃金総支給額は、総合工事業では50〜54歳まで、設備工事業では55〜59歳まで増加し続けるが、職別工事業では30〜34歳の520万1000円から35〜39歳では477万円に減少し、その後もあまり増加していない(図表3)。
その要因の一つとして、職別工事業では、経験を積んでスキルが向上しても、それが給与に反映されていないということが考えられ、経験やスキルを的確に評価し処遇に反映させる仕組みが整っていないことが危惧される。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.