2020年東京五輪の体操競技などが行われる東京・江東区で建設が進められていた「有明体操競技場」が完成した。新競技場は大屋根や外装などで、東京五輪の開催に伴い新設された施設のうち、最も多くの木材が使用されたという。
清水建設は2019年10月29日、実施設計・施工を手掛けた東京2020オリンピック・パラリンピックの主要競技施設「有明体操競技場」が完成したことを公表した。
前回の1964年東京オリンピック競技大会で清水建設は、国立代々木競技場第1体育館と湘南港(江の島ヨットハーバー)を施工し、有明体操競技場は3件目のオリンピック・パラリンピックの関連施設にあたる。
有明体操競技場は、東京2020組織委員会が発注した競技施設で、約1万2000席の観客席(一般席換算)を備え、大会期間中には体操、新体操、トランポリン、ボッチャの各競技が予定されている。
清水建設は2016年8月に執行された競技場の技術提案型総合評価方式の入札で、工期短縮や経験・専門性を有する技術者で構成した組織体制、大会後の利用までを考慮した実施設計案を提案した。その結果、東京2020組織委員会から評価され、新築工事の実施設計・施工を受注するに至った。
施工のハイライトとなったのは、2018年9月28日から5回に分けて行った木質大屋根のリフトアップ。競技場を覆う木質大屋根(88.8×117.6メートル、1万442平方メートル)の中央部を5分割した約70×14メートル・重さ200トンのユニットを地上で組み立てて、順次、所定の架設位置に押し上げた。1回目のリフトアップから回を追うごとに生産性が向上し、2019年2月28日に実施した5回目までで大幅に工程を短縮。全体で23.5カ月の超短工期を達成することができたという。
木質大屋根の「緩やかなアーチ形態」と「観客を包み込むような温かい木質ドーム空間」は、基本設計・実施設計監修・工事監理を担った日建設計が提案。施工では、清水建設が構造家・斎藤公男氏の指導のもと考案した「構造的安定性の高い張弦梁という構造形式」と「リフトアップ工法」によって実現した。
施設の規模は、地上3階建て、仮設を含めた建築面積は2万1261平方メートルで、延べ床面積は3万9194平方メートル。東京2020の立候補ファイルに謳(うた)われた「施設の木質化」「サスティナビリティ」を具現化するため、使用した木材の量は約2300立方メートルで、東京五輪に関連して建設される競技施設としては最大の使用量になる。内訳は、競技場の特徴となっている木質の大屋根にカラマツを約1500立方メートル、外装と観客席にはスギを約800立方メートル使用した。
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