住宅・ビル・施設 Week 2019 特集

ハウスメーカーが構想する“不動産ブロックチェーン”の可能性とインパクト積水ハウスIT業務部の挑戦!(2/3 ページ)

» 2019年10月16日 06時00分 公開
[石原忍BUILT]

シャーメゾン入居者向けの「MASTポイント」を既に運用

 2017年に自社内で先行してスタートしたブロックチェーンベースのサービスは、miyabi上で、まずは賃貸マンションのシャーメゾンを対象に、不動産管理システムを実用化。シャーメゾン入居者向けの「MASTポイント」として、賃料支払いで付与されるポイントを貯めて、入居者が住み替え時に最大3か月分の家賃が無料になる特典を受けられる制度で活用している。

 その後、2018年8月からは、専用アプリを介して高度なセキュリティ下で情報の蓄積を始め、既にブロックチェーン上には、63万件の実物件情報と入居者情報を格納済みで、いつでも利用可能な状態にはある。こうして集積したデータを今後は、入金履歴や契約申し込みなどにも適用範囲を広げ、グループ内だけでなく、利用者(入居者)や不動産業者、さらには異業種とも共有可能な情報連携コンソーシアムの設立を目指す。

 なぜ不動産領域でブロックチェーンなのか?について田原氏は、「不動産物件の契約行為は、現状では入居までに何度も書類を書き、実店舗に足を運ばねばならず、煩雑かつ手間がかかっている。新たな基盤であれば、物件検索から内覧の申し込みまではブロックチェーンと連携したWebサイトを活用し、その後の入居申し込み以降は専用アプリで直接ブロックチェーンに書き込む。入居に至るフローそのものを変革させることで、住まい全体のサービス強化につなげたい」と話す。

ブロックチェーンとアプリを用いた賃貸契約イメージ

 いま運用しているブロックチェーン自体は、分散型に計算をして契約の簡素化(スマートコントラクト)を可能にするプラットフォームの「Ethereum(イーサリアム)」だというが、金融向けの「Quorum(クォーラム)」との複合的な組み合わせや今後登場してくる新たなプロトコルの採用も想定している。

 しかし、「システムだけでなく、利用者の信用力も重要で、ブロックチェーン上に残る行動履歴(過去の入居や家賃支払いなど)が強力な信用保証となり、そこで初めて正統性を担保したスマートコントラクトが実現する」と指摘する。

 ブロックチェーン上に住宅領域で書き込むのは、所在地や間取り、住宅設備、クロスの貼り替えなどのリフォーム履歴といった「物件情報」と、入金履歴や居住実態などの「入居者情報」。長期間にわたる居住実績があり、賃料の支払いにも遅延履歴が無ければ、入居者にとっても、次の入居審査で障壁が無くなり、ワンランク上のサービスを提携企業から受けられる恩恵がもたらされる。

ブロックチェーンによる物件情報・利用者情報共有イメージ

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