次に、建設業で働く外国人労働者の中心となる「技能実習生」について直近3年間の推移を見ると、2015年の1万8883人から2017年には3万6589人となり(図表3)、建設業で働く外国人労働者の66%を占めている。
今回の新制度で導入される「特定技能1号」の在留資格は、最長5年の技能実習を修了するか、技能と日本語能力の試験に合格すれば取得できることから、今後、更に外国人技能実習生が増加することが予想される。
法務省は2019年度から5年間で受け入れを見込む最大約34万5000人のうち、約45%は外国人技能実習生からの移行を想定しているということである。
外国人技能実習生については低賃金での劣悪な労働条件などが問題となっているが、今回の改正法では、「特定技能」の在留資格で働く外国人には、日本人と同等以上の報酬を支払うことなどが義務付けられることになっており、技能実習生を含めて、建設業においては外国人労働者の労働環境改善を早急に進めることが必要になると考えられる。
また、設計や施工管理といった建設技術職における外国人労働者の実態を探るために、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格での就業者数の推移を見ると、2015年の1958人から2017年には3607人となり、大幅に増加している(図表4)。
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格には建設技術職以外にも、法務や会計等の専門職も含まれるので、厳密には建設技術者だけとはいえないが、建設技術者を中心とした専門的・技術的職種においても外国人労働者が増加していると言えそうである。
このように、現状においても建設業で働く外国人労働者は「技能実習生」だけではなく、建設技術者のような高度専門職においても増加傾向になっている。
政府は新制度導入に合わせて、外国人労働者の日常生活の相談に応じる「多文化共生総合相談ワンストップセンター」を全都道府県に設ける、公共機関の窓口には翻訳システムを導入する、全ての医療機関で医療を受けられる体制を構築するなど、外国人労働者の生活環境整備を強力に推進しようとしている。
このような政策的支援を背景に、今後は更に外国人労働者が増加することが予想され、建設業各社においても、外国人労働者を迎え入れるための環境整備を積極的に進め、戦略的に外国人労働者を活用することが重要になると考えられる。
ヒューマンタッチ総研(所長:高本和幸)
ヒューマンタッチ総研は、ヒューマンホールディングスの事業子会社で、人材紹介事業を行うヒューマンタッチが運営する建設業界に特化した人材動向/市場動向/未来予測などの調査・分析を行うシンクタンク。独自調査レポートやマンスリーレポート、建設ICTの最新ソリューションを紹介するセミナーなど、建設業界に関わるさまざまな情報発信を行っている。
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