国内では「従業員の採用・維持」と「テナント・賃料の確保」がビル省エネ化のカギ2018年ビルのエネルギー効率に関する調査結果(2/3 ページ)

» 2018年11月09日 06時00分 公開
[石原忍BUILT]

スマートシティー投資の用途では「LED街灯」がトップ

 実際にエネルギー効率化を図った海外事例では、2017年にオープンした上海のジョンソンコントロールズ・アジアパシフィック本社を紹介。新社屋は、世界銀行グループのIFCより受けるEDGE(Excellence in Design for Greater Efficiencies)認証に加えて、米国グリーンビルディング協議会のLEED(Leadership in Energy and Environmental Design)プラチナ認証、中国のグリーンビルデザインラベルの3つ星も取得し、中国初の世界トップクラスの省エネ認証を複数取得した環境に優しいスマートビルとなった。

 ビル設備は、屋根に蓄電用ソーラパネルを設置している他、EV(電気)自動車用のチャージングステーション、会議室のセンサー測定システムなどを備える。空調は、有害物質を排除して循環させ、上海の大気に比べて格段に清潔な空気が保たれている。

上海のジョンソンコントロールズ・アジアパシフィック本社

 また、ネットゼロへの取り組みでは、ハワイ大学との共同で行った「マウイキャンパス」やノルウェー・トロンハイムの「パワーハウス(Powerhouse)」を説明。マウイキャンパスは屋根にソーラーユニットを設置するなど、エネルギー需要の100%を再生可能エネルギーでまかなう既存キャンパスの中でネットゼロを進めているキャンパス。最終的には、今後20年間で7900万ドル以上の省エネルギー化の実現を目指している。

「マウイキャンパス」

 パワーハウス ワンは、設計段階からネットゼロを目標に、ビルのライフサイクルコストを考慮している。24度の斜角で太陽に面するソーラパネルで建物上部が覆われ、近隣のビルにも電力を供給。他にも、自然光の積極的な採り入れや空調設備のヒートポンプで建物そばのトロンハイム湾の水を使い冷水による室内温度の調整を行っているという。

ノルウェー・トロンハイムの「パワーハウス」

スマートシティーに関するアジアと世界の調査結果

 スマートシティーに関するレポートでは、中国、インド、日本、韓国の市長53人を含む、計330人の市長に聞き取りした。

 アジアにおけるスマートシティーイニシアチブは、関係者による情報提供を受けながら、主に計画事務局および市役所が推進している。情報提供する外部関係者の内訳は、「国や州レベルの政府機関」が45%、「テクノロジープロバイダー」が36%、「第三者コンサルタント」が15%の順。

 スマートシティー投資の起因は、アジアでは「サスティナビリティ」、世界では「環境問題」が解決すべき課題と重要視されている。投資の用途としては、エネルギー消費の80%近くが低減できかつライフサイクルが長い「LED街灯」が、次点の「分散型エネルギーシステム」「ブロードバンドインフラ」「都市のオープンデータプラットフォーム」などを大きく引き離して最多。街灯のポール自体を不動産と考え、監視カメラ、大気汚染センサー、アラームシステム、デジタルサイネージなどさまざまな機能を併設して、照明機能以上に活用する動きもみられる。

スマートシティー投資の用途

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