大林組は、解体工事のコンクリート破砕で使用する重機「ジャイアントブレーカー」の騒音低減と粉じん飛散を抑制する「バブルサイレンサー」を開発した。これまでジャイアントブレーカーでなければ難しかった地下躯体や基礎部分の解体工事でも、騒音低減と粉じんの飛散防止が可能になる。
大林組は、解体作業時のコンクリート破砕で使用する重機「ジャイアントブレーカー」の先端ノミ部分を泡で覆うことで、騒音レベルを低減し、粉じんの飛散を抑制する装置「バブルサイレンサー」を開発した。
バブルサイレンサーは、ジャイアントブレーカーに後付けできる解体騒音低減装置。騒音の発生源となっているノミを装置から発生する泡で覆うことで、騒音レベルを5dBA(デシベルエー)低減する。10台の重機が同時稼働した場合は、7台相当の騒音を低減できる(=エネルギーで約7割の低減)。低騒音タイプのブレーカーであれば、7dBA(エネルギーで約8割)の相乗効果も見込める。
ノミを覆う泡には、コンクリートの破砕時に発生する粉じんの飛散を抑制する効果もある。実際に日本郵政発注の「ゆうぽうと解体工事」で行われた実証試験では、安定した騒音低減と粉じん抑制の効果が得られたという。
重機によるコンクリート構造物の解体作業では、大きな騒音や粉じんの飛散が周辺環境に悪影響を及ぼしていた。そのため通常は、コンクリートをツメで握りつぶす圧砕機など、比較的騒音の小さい重機を利用している。
しかし、地下の躯体や基礎の解体では、コンクリートの背面に空間がなく、ツメが入らないため、コンクリートをノミで突き崩す重機「ジャイアントブレーカー」を使わざるを得ない。ジャイアントブレーカーは、圧砕機と比べて騒音が大きく、ノミの駆動部に防音対策を施した低騒音タイプのブレーカーでも、2dBA(エネルギーで約3割)程度の低減と効果が限定的で、より効果的な技術が求められていた。
大林組は開発に際し、ブレーカーの騒音発生状況の可視化や騒音の周波数特性を解析。最も影響の大きな騒音発生箇所がノミ部分であること、その騒音は人が不快に感じやすい高音域の成分が特に大きいことを突き止めた。
ノミ部分は、遮音カバーを取り付けても、破砕したコンクリート片の飛散によって破損してしまい、今まで有効な対策手段がなかった。バブルサイレンサーであれば、ノミを覆う泡を常時放出するため、騒音低減に加えて、一定の泡の厚さを保つことで、特に人が不快に感じる高音域の騒音を抑制する。ブレーカーを使わざるを得ない地下躯体や基礎部分の解体作業でも、従来困難だった騒音源への対策が実現した。
粉じん飛散では、現状では飛散防止ネットの設置や作業員による散水などの防止策が講じられているが、バブルサイレンサーは、放出した泡が突き崩したコンクリート片を包み込むことで飛び散りを防止。放出する泡は工事で一般に使われている安全な材料を使用するため、通常の「がれき類」として従来通りに処分できる利点もある。
大林組では、将来的には岩盤の掘削などのブレーカーを利用する他の工事にも、バブルサイレンサーの適用を検討していく。
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