独自のCIMシステムをベースにしたクラウド型の現場打ちコンクリート「打重ね管理システム」CIM

大成建設は、コンクリートの打ち重ね状況をリアルタイムに把握できるCIMシステムをベースにした管理システムを開発。生コンの練り混ぜから打設完了までの作業状況をクラウド上で一元管理することで、情報の把握や共有が可能になり、コンクリート工事の品質および生産性の向上が図れる。

» 2018年10月02日 06時00分 公開
[石原忍BUILT]

 大成建設は、現場打ちコンクリートの工事管理システム「T-CIM/Concrete」の機能を拡張し、新たにコンクリート打重ね状況をリアルタイムに管理する「打重ね管理システム」を開発した。

コンクリートの打重ね状況をリアルタイムに把握・管理

 現場打ちコンクリート工事は通常、2層以上に分けて生コンを打設する場合は、固まり始めたコンクリートと、その上層に打設するコンクリートの境界面に「コールドジョイント(cold joint)」と呼ばれる現象が発生することがある。コールドジョイントは、コンクリートを打ち重ねる際の適正な制限時間を過ぎて打設した際に、打設済みコンクリートの上層部と新たに打設した部分が一体化しない状態を指し、構造物の強度不足を招くとされる。

 今までは、各施工エリアで工事担当者が、打設の開始・完了時刻から打重ねる時間を計算し、野帳に記録して管理していた。この手法では、複数の施工エリアで同時打設する場合、工事全体の打設状況をリアルタイムに確認や共有ができないため、制限時間内での施工が困難だった。打設完了後、手書き記録に基づくデータ整理や帳票など、提出書類の作成にも時間がかかっていた。

 大成建設ではこれらの課題解決に、独自開発のCIM(Construction Information Modeling)システム「T-CIM」を活用。T-CIMは、土木工事作業所で運用しているICT技術を活用した施工システムと、3次元のCIMモデルを統合したCIMシステム。ダムやトンネルなどの構造物に特化した「専門工種」と、どの工事にも当てはまるコンクリート工などの「共通工種」を相互に連携させ体系化。このシステムを導入することで、施工情報のひもづけに最適な3次元モデルが容易に作成でき、CIMモデルと連動させて各種施工情報の入力・更新が行える。

打重ね管理システムの概要図(コンクリートポンプ車2台の場合) 出典:大成建設

 打重ね管理システムでは、施工対象物の構造図をExcelの表に落とし込み、積木状の「格子要素」を基本ブロックとして設定する。梁(はり)や桁など、施工単位ごとにグループ化した施工ブロックを色分けすることで、打設済み・打設中・打設前などが一目で分かるように“見える化”される。各施工ブロックをクリックすると、打設開始・完了時刻、打重ね時間などの詳細な施工手順を現場のタブレット端末画面上などで確認することができる。Excelのページを変えることで、1層から3層など、打設層を変更して状況把握することも可能だ。

Excel表を用いた打重ねモデル 出典:大成建設

 システムの適用で、形状が複雑な梁(はり)スラブ構造やタンクなどの円形構造物でも、複雑な打設手順の設定・編集を容易に行える。計画の段階で多くのケースを事前検討し、打ち重ね時間が最適となる打設手順の選定が可能になる。施工途中で打設手順が変更になった場合でも、それまでの施工記録を継続した状態で関連情報を入力することで、さまざまな打設パターンにも柔軟に応じられる。

 また、複数ポンプ車で複数エリアを同時施工する際は、エリアごとで同時に打設情報を入力できる。打重ねの制限時間が近づいたときは、打重ね境界部が画面上で赤色に表示され、メールの警報で注意を促がす。

打重ね管理システム表示画面。全体表示(左)、詳細表示(右 出典:大成建設

 このシステムでは、これまで工事担当者が個別に生コン伝票や野帳に記録していた生コンの練混ぜから打設完了までの各情報が、クラウドサーバ上で一元管理される。そのため、隣接する施工ブロックや各施工エリアでの打設や打重ね状況が情報共有でき、コンクリートのトレーサビリティや生コンロスの最小化など、迅速で精度の高い打設管理が実現する。

 さらに、これまでは打設後に帳票などを別途作成する必要があったが、自動作成されるため、業務の省力化、効率化がもたらされる。

 大成建設では今後、現場打ちコンクリート工事に本システムの積極的な導入を図っていくとともに、各工種のCIMと連携させ、構造物の維持管理段階でのCIM適用に向け、改良を加えていくとしている。

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