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» 2018年09月27日 11時00分 公開

耐震・制震・免震:損傷リスク低減や作業性を向上させたRC構造物に対する「耐震補強技術」の適用範囲を拡大

奥村組は、既存鉄筋コンクリート構造物の耐震補強技術として開発した後施工せん断補強鉄筋「ベストグラウトバー」の適用範囲を拡大させた。

[石原忍,BUILT]

 奥村組が2015年度に開発した後施工せん断補強鉄筋「ベストグラウトバー」は、土木研究センターの建設技術審査証明(土木系材料・製品・技術、道路保全技術)を取得しており、このほど、適用範囲を拡大する内容変更を同センターに申請し、承認された。

これまで6万3000本に適用、適用範囲の拡大でさらなる導入を図る

 一般的に、背面に地盤があるRC構造物を耐震補強する場合は、せん断力を向上させるため、片側から構造物を削孔し、孔内に鉄筋を挿入してモルタルを充てんすることで構造体と一体化させている。しかし、この工法では、補強鉄筋の本数が多くなると削孔数も増え、削孔により、RC構造物の奥側の主鉄筋を損傷してしまう懸念がある。加えて、要求されるせん断補強効果を発揮させるには、削孔した孔内にモルタルを隙間なく充てんする必要があり、上向き姿勢で行うには作業性が悪いことも課題とされていた。

 奥村組では、これらの課題解決のため、後施工せん断補強鉄筋「ベストグラウトバー」を用いた耐震補強工法を開発し、これまでに8現場で約6万3000本に適用してきた。今後も耐震補強工事が増えていくと見て、汎用性を高める目的で、検証を重ねた結果、今回導入できる鉄筋径の拡大などの変更申請を行った。

「ベストグラウトバー」を用いた耐震補強工法の概要 出典:奥村組

 ベストグラウトバーは、一般的に使用される鉄筋の片側をネジ切りと斜め切断加工を施し、先端部に六角ナット(定着体)を装着する。ベストグラウトバーを用いた耐震補強工法は、RC構造物の奥側主鉄筋の手前までの挿入で十分な補強効果を発揮する。そのため、削孔による奥側主鉄筋の損傷リスクは大幅に低減する。

 また、充てん材に可塑性モルタル(無機系無収縮プレミックスモルタル)を使用して、充てんおよび鉄筋挿入時に専用治具を用いることで、上向き姿勢であっても液垂れすることがなく、安定した施工品質を確保することが実現する。

左がモルタル充填治具と充填作業の概要、右が鉄筋挿入治具と挿入作業の概要 出典:奥村組

 今回適用を拡大させたのは、鉄筋径では、従来の鋼材種「SD345」と「SD390」の「D16、D19、D22」に、新たに「SD345」の「D25」を追加。せん断補強の効果を示す有効係数では、これまでの鋼材種「SD390」と「SD345」を同じ有効係数の上限値としていていたが、鋼材種「SD345」の上限値を載荷実験により更新した。これにより、ベストグラウトバーを導入できる鉄筋コンクリート構造物の範囲が広がった。

 奥村組では今後、RC構造物に対して片側から施工できる高品質かつ高効率な耐震補強技術として、積極的に提案していくとしている。

SD345 SD390
D16 0.88 0.68
D19 0.81 0.68
D22 0.81 0.71
D25 0.64 -
有効係数の上限値。タテが鉄筋、ヨコが鋼材種


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