IHIインフラシステム(IIS)が世界初のアクティブ式制震装置を開発し、販売をスタートさせた。リニアモータの採用で軽量・薄型を実現するとともに、揺れ幅は約40%低減・後揺れ時間は約80%短縮する。
IHIインフラシステムは、地震時に建物の揺れを大きく低減するリニアモータ制御による軽量・小型の制震装置を開発。2018年6月18日から販売を開始した。同社はIHIのグループ会社で防災機器の製造販売も担う。
この制震装置は、対策が急がれる高層ビルの長周期地震時に、ビルの揺れ幅を約40%低減し、かつ後揺れ時間を約80%短縮する効果が見込まれている。同装置は、個別受注生産品となっており、該当ビルの構造・高さや地震の想定条件などに合わせ、仕様と価格を決定する。
高層ビル向けの制震装置は、建物頂部に設置した錘(おもり)が、揺れ方向と逆に動くことで、建物の揺れを低減させる仕組み。主に、モータなどで能動的に錘を動かす「アクティブ式」と、建物に同調して揺れる錘の反力を利用する無電力の「パッシブ式」に分かれる。
今回の制震装置は、同社が得意とする「アクティブ式」によるもので、これまで風揺れ対策用装置はあったものの、揺れ幅の大きい地震向け装置は世界的に見ても業界初の開発。同社でもアクティブ式制振装置は、強風対策用として販売展開し、高さ60m(メートル)ほどのビルにも設置実績を持っていたが、停電する可能性がある地震向け装置は電力の確保が最大の足かせとなっていた。今回、大容量バッテリーを用いた電源システムの開発に成功、標準装備することで地震にも対応可能とした。
構造としては、錘が可動するガイドレールを縦横・上下二軸に配置し、あらゆる方向の揺れに対応、大地震による長周期地震動を抑制する。装置の総重量は、錘の可動範囲が大きいリニアモータを採用したことで、可動範囲が小さく大型の錘も必要なパッシブ式に比べ60%削減、ビルそのものの構造強度の軽減にもつながるとしている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.