LEED認証とは何か、取得のメリットと概要を知る基礎から学ぶ「グリーンビルディング認証」(1)(1/6 ページ)

建築物の環境性能を評価する認証制度には、さまざまな種類がある。その1つであり、国際的な認証制度として普及が進んでいるのがLEED認証だ。本連載では一般社団法人グリーン ビルディング ジャパンのメンバーが、こうしたLEEDをはじめとする「グリーンビルディング認証」の概要や、取得のための仕組みを解説する。第1回ではLEED認証の概要について紹介する。

» 2017年03月27日 06時00分 公開

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 製品の環境への影響・配慮といった、いわゆる「環境性能」を評価する時、その評価軸は多岐にわたる。一般的には、生産・輸送・消費・廃棄といった、製品のライフサイクルを段階に分けた時間としての評価軸や、水・空気・エネルギーといったそれぞれの因子に特化した環境影響の評価指標が挙げられる。

 では、建物はどういった評価軸で環境性能を評価できるのだろうか。その評価方法を提案するのが、グリーンビルディングの認証、「LEED」と「WELL」である。

 この連載では4名のGBJ(注1)の会員が、グリーンビルディング認証について、認証の概要や取得におけるメリットなどの全体像から、認証取得時に加点対象となる評価ポイントの要求事項・試験方法の具体例に至るまで、認証取得の大枠を理解できるよう、リレー方式にて解説する。

(注1)GBJ:一般社団法人グリーン ビルディング ジャパン。LEEDの主体団体であるU.S.グリーンビルディング協会(USGBC)と連携を取り、LEEDユーザーの立場で活動する、日本で唯一の団体である。グリーンビルディングに関わる立場として、建設・製造・不動産・コンサルティング・建築設計・ビル経営・試験評価と、幅広い業種が参加している。

建築物の環境性能総合評価について

 地球環境問題への世界的な意識の高まりと呼応するように、建築物の環境性能を客観的に評価し建物の所有者・使用者や不動産市場に示すことのできる指標、いわゆる「建築物の環境性能総合評価プログラム」が2000年前後から相次いで登場した。日本のCASBEE(2002年〜)を始め、BREEAM(英国1990年〜)、LEED(米国1998年〜)、GREEN STAR(オーストラリア2003年〜)、Green Mark(シンガポール2005年〜)、DGNB(ドイツ2009年〜)などである。

 これらの認証プログラムは、信頼性のある手法や基準を用いた建築物の評価を通じて、環境と人の健康を重視すること、省エネルギーと水使用量を低減すること、CO2排出量削減に寄与することとともに、運用コストの削減を実現するような、グリーンビルディング(あるいはサステナブルビル)の普及によって、グリーンビルディングのマーケットトランスフォーメーション(市場変容)がもたらされることを目指している。

 例えば、グリーンビルディングに対する消費者意識が高まること、認証格付けにより市場価値が高まること、建築物の「グリーン化」競争がより高い水準へと推進され続けることにより、全体のレベルアップをけん引していくことなども期待されている。その結果、グリーンビルディングを特別に意識せずに計画・建設または生活をしていても、持続可能で快適な環境が普通に実現されていく社会へと変革してゆくことを大きな目標としている。

世界的な普及が進むLEED

 現在、それらの中で国際的に最も認知され普及している認証プログラムが、「LEED (Leadership in Energy and Environment Design:エネルギーと環境設計におけるリーダーシップ)」である。LEEDは、非営利の民間団体である米国グリーンビルディング協会(U.S. Green Building Council)により開発と普及活動が進められているプログラムで、1998年からの試行を経て2000年の「新築版」から正式に始動した。

 2009年1月時点での認証数は約2200件に過ぎなかったが、普及のペースは加速し、2017年1月現在は約3万6400件のプロジェクトが認証されている。最近の1日当たりの認証ペースを面積に換算すると、約20万6300m2にもなる。高水準のグリーンビルディングを設計・建設・運用する目的の評価ツールとして、LEEDが発祥した米国国内はもとより、世界的に普及が広がっている。これまでの認証数の22%と、現在の登録数の45%は米国外である。また、認証済件数とLEED認証前のプロジェクト登録数との合計は、164の国と地域で9万100プロジェクトを超えている[1]

 LEEDは、これまで大きなバージョンアップを3〜5年おきに繰り返し、2013年11月リリースの最新バージョン「v4」に至っている。2016年10月までは移行期間として旧バージョンでの新規プロジェクト登録も可能であったが、現在はv4での登録のみとなっている。ここではv4に準拠してLEEDの評価について紹介する。

[1]USGBCのWebサイト「USGBC Statistics - official statistics about USGBC programs」(住宅認証のLEED-Homesを除く統計、2016年7月1日発表)

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