矢野経済研究所は国内ビル管理市場の調査結果を発表した。2015年度の市場規模は前年度比2.7%増の3兆8759億円で今後も堅調に推移する見通しだ。一方、ビル管理業務に対する品質向上の要求は今後も続くとし、事業者側は付加価値の向上に取り組んでいく必要があるとした。
矢野経済研究所は2016年10月3日、2015年度の国内のビル管理市場調査の結果を発表した。対象とするのはビル清掃、設備管理、警備業務をはじめとする受託サービスなどで、市場規模は元請金額ベースで算出している。なお、ビル管理事業者が請け負う修繕工事、改修工事、リニューアル工事などの周辺業務も対象としているが、事業者の異業種における売上高は含んでいない。
2015年度の国内のビル管理市場規模は、前年度比2.7%増の3兆7634億円となった。前年度下半期から続く受注増の流れ、さらに品質重視のビル管理業務が求められていることもあり、堅調な推移となったとしている(図1)。
ビル所有者(オーナー)からの管理費減額要請は継続しつつも、新しい案件に対するビル管理事業者の品質重視の提案が受け入れられている傾向にあり、低価格競争から脱却した品質確保、付加価値による業務単価の向上が可能な市場環境へと転換していると評価した。プレーヤー面では、品質重視の傾向によりブランドや実績の観点から大手ビル管理事業者のシェア拡大、寡占化の傾向が進んでいるとしている。
ビル管理業務の内容についてはリニューアル、改修などの工事に対する意識が依然として高く、省エネ設備の導入だけでなく、導入後の稼働状況のフィードバックや運用改善指導などのソフト面の支援まで幅広く業容が拡大している面もあるとした。単に工事だけで終わらないサービスを提供することで、業務単価の底上げにつながるといったメリットも影響しているようだ。
このように業容の拡大が進む中で、きめ細かなサービスやソフト面の支援にもニーズが出てきている。グローバルな展開では、海外のビル管理事業者との合弁企業の設立など、大手ビル管理事業者を中心としてグローバル市場への進出が加速。外国人労働者の受け入れについても一段階進んでおり、大手ビル管理事業者において受け入れが開始される例もあるとしている。人口減少の始まった日本において今後の人材不足は明らかだ。調査では特に企業体力のある大手ビル管理事業者においてはこうした将来の課題に対し、積極的に取り組んでいくべきであるとした。
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