大成建設は同社の横浜にある実証施設で、建物の年間のエネルギー収支ゼロにするZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)を達成した。狭い都市部にあるオフィスビルで建物単体のZEB達成は国内初の事例だ。さらに実証成果を活用したZEBの評価ツールも開発し、ZEBの普及に注力していく方針だ。
建物全体で消費する一次エネルギーを実質的にゼロにする「ZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)」の開発が急速に進んでいる。大成建設は同社の技術センター(神奈川県横浜市)に建設した「ZEB実証棟」で、2014年6月から1年間の実証を行った。その結果、年間のエネルギー消費量が1平方メートル当たり463MJ(メガジュール)、創エネルギー量が同493MJとなり「年間のエネルギー収支ゼロ」を達成。都市部にある建物単体のZEB達成は国内初の事例になるという。
ZEBは2009年に経済産業省から提案され、「建物における一次エネルギー消費量を、建築物・設備の省エネ性能の向上、エネルギーの面的利用、オンサイトでの再生可能エネルギーの活用などにより削減し、年間の一次エネルギー消費量が正味(ネット)でゼロ又はおおむねゼロとなる建築物」と定義されている。
今回、大成建設が行った実証の目的は、オフィスビルが集中する都市部の狭小エリアに建設した建設物でも、利用者の快適性を損なわずにZEBを達成する「都市型ZEB」の実現だ。建物のエネルギー消費量75%を削減する「超省エネ技術」と、残りのエネルギー消費量25%を賄う太陽光発電による「創エネ技術」を1年間に渡り運用・実証し、これまで困難とされていた都市部のオフィスビルでもZEB化が可能なことを立証した(図2)。
さらに同社は、今後のZEBの普及展開に向けた取組みとして、ZEBの計画・評価ツール「T−ZEBシミュレーター」を開発した。T‐ZEBシミュレーターは、今回の大成建設の実証で集積したさまざまなデータを活用した解析が行えるツールで、ZEB化のための計画・評価や年間エネルギー収支の検討を従来よりも高精度かつ短時間で行えるという(図3)。
同ツールでは、立地や周辺建物等の影響を考慮した太陽光・風力・地中熱などによる創エネルギー量と、計画建物に省エネルギー手法を導入した場合のエネルギー消費量とのエネルギー収支をさまざまなパターンで検討することができる。これによりZEB化を実現するための検討や提案が行いやすくなるという。
今後、大成建設では、ZEB化を実現する超省エネ技術と創エネ技術のさらなる高機能化やコスト削減を進めるとともに、T‐ZEBシミュレーターにコスト検討機能を付加して計画・評価技術の高度化を図る方針だ。さらに2020年には「市場性のあるZEBの実現」、2030年までに「ZEBの普及拡大」を目標として、都市部を含め全国で計画されているZEB化を目指した新築・既存の建物への提案活動を強化していく(図4)。
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