住宅に目を向けると、太陽光発電やエネルギー管理システムを装備したスマートハウスが急速に普及してきた。特に太陽光パネルの搭載容量が5kWを超えるようになってから、ネット・ゼロ・エネルギーを実現できる住宅が増えている。
積水化学工業が約1700戸のスマートハウスを対象に調査した結果では、2013年の時点で半数以上が「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」の状態になっている(図5)。国の補助金の対象になるZEHは家電製品(テレビ、冷蔵庫、洗濯機など)のエネルギー消費量を除外することが認められているが、家電製品を含めてもZEHを達成した住宅が13%あった。
今後さらに太陽光パネルの容量が大きくなって、電気機器の消費電力が減っていくと、ZEHの比率はますます高まる。太陽光パネル(太陽電池)に加えて燃料電池と蓄電池を組み合わせた「3電池住宅」になれば、エネルギー消費量の削減効果はいっそう大きくなる。
大阪ガスと積水ハウスが奈良県で実施した「3電池住宅」の居住実験では、年間の光熱費がゼロ以下になっている(図6)。2階建ての住宅に4人家族が3年近く住んでみた結果、太陽光発電の売電収入が電力やガスの購入額を10万円以上も上回った。電動シャッターや電動カーテンなどを装備して、居住者が手間をかけずに節電できるようにした効果が大きかった。
ネット・ゼロ・エネルギーの取り組みは個々の住宅にとどまらず、街全体で実現する試みも始まっている。大和ハウス工業が三重県で開発中の「SMA×ECO TOWN陽だまりの丘」が典型的な例だ。64戸のスマートハウスを建設するのと合わせて、住宅街の道路に沿って100kWの太陽光発電所を設置する(図7)。
太陽光発電所だけでも年間の発電量は10万kWhになり、一般家庭で28世帯分の電力を供給することができる。住宅の屋根に搭載する太陽光パネルの発電量と合わせれば、街全体が「ネット・ゼロ・エネルギー・タウン」になる。この先進的な住宅街は2015年7月に完成する予定だ。
経済産業省は2015年度も引き続きネット・ゼロ・エネルギーの補助金を実施する。ビル向けと住宅向けで合計150億円の予算を割り当てる方針で、2014年度の76億円から一気に倍増させる。これまで以上のスピードで全国各地にネット・ゼロ・エネルギーのビルと住宅が広がっていく。
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