ソースZEB化を実現するには1つの技術だけでは足りない。大きく3つの分野の技術を生かした。第1が空調や給排水、照明機器の高度な制御と高効率化だ。図4にあるように潜熱蓄熱槽や地中熱利用、太陽熱給湯など、熱資源をうまく使って空調を改善する。「図に挙げたものは主な技術だけであり、他にも断熱など有効な手法を数多く取り入れている」(大林組)。
第2がコージェネレーションだ。「研究室内にある大型の遠心分離器から発生する熱なども融通している」(大林組)。土木建築用の機械は研究用とはいえ大型だからだ。
第3が太陽光発電システムだ。図5中央に写るテクノステーションと、周囲の建物の屋上に約1200kW分の太陽電池を設置した。「テクノステーション以外の建物はさまざまな規模の実験設備が設置されており、実験の際だけ、人が出入りする」(大林組)。
同社は2010年9月に完成したテクノステーションをZEBに必要な技術を研究開発する拠点と考えている。例えば、2011年度には「エミッションZEB」を達成している。エミッションZEBとは二酸化炭素(CO2)の年間排出量を0にする取り組みだ。
一般事務所ビル(二酸化炭素排出量97kg/m2)と比べて省エネで45%、各種の創エネで12%、合計で57.2%削減し、残りの42.8%をカーボンクレジット*3)を購入することでまかなった。2012年度は削減率を64.7%まで高めており、これは国内最大級だという。
エミッションZEBに続く取り組みが、今回の取り組みを開始したソースZEBだ。さらに先進的な目標もある。「ZEC(ゼロエネルギーコンストラション)」と「LCZ(ライフサイクルZEB)」だ。ZECは大林組が独自に打ち出した指標であり、国内の土木・建築施工において、エネルギー使用量を0にするというもの。2020年の実現を目標としている。
工期を短縮し、溶接などをなるべく使わない省エネ工法や省エネ建設機械を開発、節電や再生可能エネルギーと組み合わせることで実現する。
LCZはさらに包括的な取り組みだ(図6)。建物を新しく立ち上げ、運用し、改修し、最終的には解体する。このような建物のライフサイクルを100年にまで伸ばし、全期間を通してエネルギー収支を0にするという同社の独自の取り組みだ。図6にあるZEM(ゼロエネルギーマテリアル)とは資材生産をゼロエネルギー化するという意味。建物にかかわる全てのエネルギーが0になっていることが分かる。
LCZの目標は2050年。35年後にはこのような手法が一般化していることに期待したい。
*3) 二酸化炭素などの温室効果ガスの削減努力を行った後、避けることが難しい排出量が残る。この残った分量に応じて、温室効果ガスの削減活動に投資するという考え方がある。カーボンクレジットは排出権取引を利用した手法の1つだ。
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