日建設計が中央大「茗荷谷キャンパス」に実装 地下でも自然光を感じる照明技術照明設計(1/2 ページ)

自然採光は建物の利用者に対し、リラックスや集中力などのメリットを与える。しかし、地下空間では採光自体が難しい。そこで日建設計はLED照明と植栽を組み合わせ、地下空間で自然光を再現する新しいライティング技術を開発し、中央大学の「茗荷谷キャンパス」に実装した。

» 2025年03月13日 12時38分 公開
[宮裡將揮BUILT]

 建物内の自然採光は気分や疲れの改善、集中力の向上、快適性など利用者に対してさまざまなメリットを与える。しかし、地下や周辺建物の状況など建物内に外光を取り込むことが難しい物件は数多く、土地が限られている都心部などの建物内では選択肢がない事例もある。

 そうした中で日建設計はLED照明と植栽を組み合わせ、自然光を人工的に再現する新技術を開発した。既に2023年4月に東京都文京区でオープンした中央大学の茗荷谷キャンパスに採用され、利用者から好感の声が寄せられている。

自然光が持つさまざまな導入メリットと、日建設計の企画開発力

 リラックス時の学習効果について、多くの研究からさまざまなプラスの効果を与えることが知られている。記憶や処理、学力増加の効果を分析した研究や睡眠時の定着効果などが裏付けられ、より強く持続的な記憶が形成される可能性も高いとされている。

 そのため、学修空間での最適な光環境としても、リラックス効果が出やすい自然光は有効で集中力や記憶力の向上が期待できる。ただ、そうした環境は外光を取り込める環境でなければ実現しない。

 今回、日建設計は茗荷谷キャンパス内の地下2階で、樹木のある自然な窓景観を作れるように企画開発した。窓外の光景を地上の自然に近づけることで、リラックス効果の促進を狙った。

キャンパス内の地下2階のドライエリアに照明と観葉植物を設置 キャンパス内の地下2階のドライエリアに照明と観葉植物を設置 提供:日建設計

 自然光は、天空光と大陽直射光の2種類を組み合わせている。実測確認をすると、色温度は天空光が高色温度の白っぽい光の10000K(ケルビン)、直射光が低色温度の少し赤みのある3500〜4500Kになると分析。人工照明による再現実験では、植栽に差し込む光で自然な視覚効果を得られる方法を検討し、「直射光のみ」「天空光のみ」「天空光と直射光」の3パターンを解析した。両方の光が差し込むと、植栽が生き生きとみえ、活気のある空間になるなど試行錯誤を重ねた。

人工照明を使った再現実験を行い、自然光に見える手法を探った 人工照明を使った再現実験を行い、自然光に見える手法を探った 提供:日建設計
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