本連載では、FMとデジタル情報に軸足を置き、建物/施設の運営や維持管理分野でのデジタル情報の活用について、JFMAの「BIM・FM研究部会」に所属する部会員が交代で執筆していく。今回は、福井コンピュータアーキテクト 飯島勇氏がBIMをFMで活用するために、属性情報を“データベース”と捉えて情報を管理する方法について、必要最小限のデータ入力で最大の効果を発揮する「GLOOBE」をもとにした「Simple-BIM」とともに解説します。
私は福井コンピュータアーキテクトで、2009年12月に発売したBIMシステム「GLOOBE(グローブ)」の開発部署に所属し、FMにBIMがどう使えるかの研究開発に携わっています。FM連携機能をリリースして8年以上、多くのユーザーと共に日々進化してまいりました。今回、「BIMから見たFM」という目線で、BIM×FMの取り組みを紹介させていただきます。
日本でBIMが注目され始めた頃、3次元建物モデルの属性情報により、建物に携わる全ての人に大きなメリットを生む画期的な技術だと多くの人が信じていました。その時代でも「BIM情報の整理」が課題でした。建築の属性情報を有するBIMデータをFMでも活用しようとしましたが、うまくいきませんでした。
BIMは建築情報を内包していますが、FMで活用する「分類」が基本情報として設定されていませんでした。例えば「ボード2枚張り=GB-R12.5+GB-R12.5」というような情報があったとします。設計・施工で実際に作った情報は入っていますが、内装工事の大項目や中項目などが入っていません。BIM利用者がプロパティーを追加して、情報を付加することは可能ですが、大変な労力が掛かってしまいます。なぜなら、モデルの詳細度にもよりますが、1300平方メートルくらいの建物でも、5000点以上のオブジェクトを含んでいるからです。膨大なオブジェクトを個々に設定するには手間を要し、見落とし防止やデータチェックにも相応の時間が必要になります。
BIMモデルに大量の情報を詰め込む方法は、手間と時間が掛かり過ぎることが分かりました。情報管理も煩雑なため、効率的な方法を模索することになりました。そこでBIMデータを「データベース(DB)」と捉え、情報を管理する方法が注目されました。
まずはDBを使って分類項目をBIMに落とし込むことです。その方法は良好な結果が得られました。大項目/中項目/小項目の内容をIDによる分類分けで文字数を減らし、データ容量の削減につながりました。IDの付与では同一のものは複写などができ、手間も減らせました。
しかし、IDを付与するにはマスターを探しながら行わなければならず、時間を削減して効率化するには至りませんでした。そこでIDを紐(ひも)付ける機能「マイニング」を開発しました。
マイニングは“掘り当てる”の意味なので、正確にはニュアンスが違うかもしれませんが、大量のDBから必要な情報を掘り当てるイメージで名称に採用しました。
BIMの建築情報を活用し、ルールに合致する内容をもとに、BIMオブジェクトに自動でIDを割り振る機能として公開しました。最初にルールを作る際に時間が掛かりますが、実案件ごとに簡単に追加できるため、件数をこなすほどルール化され、マイニングが効率化されます。
IDが付与されたBIMデータをFMシステムと連携することで、施設台帳や修繕計画を半自動で作成することが実現しました。
先ほどの1300平方メートルの建物で検証すると、手拾いで約10日間掛かるところが、BIMモデルでは2日間で同様の内容を作成できました。マイニングによる時間短縮が実証され、BIMモデルをDBと捉える方法が有用だと証明されたことにもなります。結果として、BIM情報をFMシステム側で整理することができるようになり、活用の幅が広がりました。
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