最大積載荷重5トン、76人を搬送できる工事用エレベーターを清水建設が開発 「Torch Tower」でも活用施工

清水建設は、三成研機、エスシー・マシーナリと共同で、超高層ビルの工期を左右する揚重作業の効率化を目的に、最大積載荷重5.0トン、分速110メートルの垂直搬送性能を備えた工事用エレベーター「SEC-5000RS」を開発したと発表した。1号機は既に日本橋1丁目中地区建設工事で稼働中で、2号機と3号機は三菱地所が開発する国内最高層の「Torch Tower」新築工事への適用が決定している。

» 2024年09月12日 11時00分 公開
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 清水建設は2024年9月10日、三成研機、エスシー・マシーナリと共同で、超高層ビルの工期を左右する揚重作業の効率化を目的に、最大積載荷重5.0トン、分速110メートルの垂直搬送性能を備えた工事用エレベーター「SEC-5000RS」を開発したと発表した。1号機は既に日本橋1丁目中地区建設工事で稼働中で、2号機と3号機は三菱地所が開発する国内最高層(地上62階、高さ約390メートル)の「Torch Tower」新築工事への適用が決定している。

SEC5000-RSの外観 SEC5000-RSの外観 出典:清水建設プレスリリース

 SEC-5000RSのサイズは内寸5.8メートル(幅)×2.16メートル(奥行き)×3.0メートル(高さ)。従来の3.0トンタイプに比べ、搬器床面積は1.6倍の12.53平方メートル、ボード積載量への換算では3倍の6山、作業員換算で約1.7倍の76人が搭乗できる。駆動装置の高機能化で、昇降速度を10%高速化し、分速110メートルとした。可変速制御により積載荷重0〜3トン時は分速110メートル、3〜4.5トン時は同100メートル、4.5〜5トン時は同90メートルに変速。軽積載時に駆動装置に生じる余力を昇降速度のアップに割り当てる。

搬送能力の比較 搬送能力の比較 出典:清水建設プレスリリース

 開発にあたっては、高機能化した駆動装置の騒音低減が課題になった。搬器下部に設置されている駆動部から搬器に伝わる振動が騒音源となるため、双方を分離して駆動部から搬器を吊り下げ、防振機能を備えた連結器具で搬器を防振化する形式を考案。従来の形式に比べ、騒音が高架下レベルに相当する約90デシベルから、電車の中に相当する約80デシベルとなり、現行の汎用的な工事用エレベーターよりも低騒音になった。

従来機構との比較 従来機構との比較 出典:清水建設プレスリリース

SEC5000-RSを水平展開、受注競争力や利益率向上図る

 工事用エレベーターは超高層ビル施工現場のロジスティクスの要であり、施工の効率化には資機材や作業員の効率的な搬送や移動が求められる。一方で朝礼後や休憩時間後などにエレベーター前に作業員の長蛇の列ができたり、積載荷重制限に対して軽積載のままでの搬送したりと、運用面での課題も生じていた。そこで清水建設は、大容量のエレベーター搬器と、積載荷重に即した可変速制御機能を備えた工事用エレベーターの開発を進めてきた。

 開発に当たっては、清水建設が基本機能の企画/設定と実機の性能調査、三成研機が実験装置の基本設計と製作、エスシー・マシーナリが仕様の検討と実験を担った。今後も大都市圏を中心に見込まれる超高層ビルの建設に際して、SEC5000-RSを水平展開することで超高層ビル施工の効率化を進めるとともに、受注競争力や利益率の向上を図る。

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