本連載では、アメックスの建設業界を対象にした調査結果をもとに、業界が直面している人材不足や労働人口の高齢化など「ひと」に関する課題や経理業務での支払い業務の煩雑さや属人的な作業を、どう改善していくべきか、前後編の2回にわたり、解説します。
アメリカン・エキスプレスは2023年4月、建設・建築業界のバックオフィス、特に経理業務の実態を捉えることを目的とした「建設・建築業界における企業間決済調査」を実施し、同年6月にその結果を発表しました。
「クレジットカード会社が、なぜ建設・建築業界に注目しているのか?」と疑問を持たれる方もいらっしゃるかと思います。消費者向け決済で、キャッシュレスの利用が普及しているように、企業間の取引でもクレジットカードの利用が進んでおり、建設・建築業では、ネジ一本から、資材や重機の購入まで利用が広がっています。
2024年問題を抱える建設・建築業界で、人材不足は深刻な課題です。日本全体で少子高齢化による労働人口の減少に歯止めがかからない現状で、「3K」などと揶揄(やゆ)されることの多い建設・建築業界を志望する若い労働者は年々減少傾向にあると耳にします。その結果、業界全体で慢性的に人材が不足し、労働人口も高齢化しているという悪循環に陥っています。
今回の調査でも、「業界全体で直面している課題は?」という質問に対し、「人材不足」と回答した人は51.8%と半数を超え、次いで「労働人口の高齢化」と回答した人も38.5%となっています。
国土交通省が2021年に発表した「建設業の働き方改革の現状と課題」によれば、建設業の就業者数は2020年で55歳以上が36.0%、29歳以下は11.8%。既に、団塊世代の大量離職も始まっており、今後ますます深刻度が増していくことになるでしょう。
そして、建設・建築業界をさらに苦しめているのが、働き方改革関連法の施行による“時間外労働時間の上限規制”です。建設・建築業界には、働き方改革関連法の適用までに5年の猶予期間が設けられていましたが、いよいよ2024年の4月からは建設・建築業界も適用対象となります。これまで「36協定」を締結し、届け出があれば時間外労働時間に上限の規制はなく、法定労働時間を超過しても罰則はありませんでしたが、今後は長時間労働を是正して行かなければなりません。
人材不足にもかかわらず、時間外労働(残業)の上限に規制がかかり、さらに時間外労働に対する割増賃金についても働き方改革関連法によって引き上げられます。必然的にこれまでよりも工期は長くなり、費用も高くせざるを得ない状況に陥ることが想像できます。
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