西松建設が開発した小型センサー「OKIPPA」は、ただ置くだけで24時間のインフラ監視を実現する。これまでに、斜面の傾斜計をはじめ、コンクリひび割れ計測、災害予防監視、農業分野まで、さまざまなシーンでの利用が拡大している。
出展社数402社/出展小間2200ブースと過去最大規模でとなった「第5回 建設・測量生産性向上展(CSPI-EXPO 2023)」(会期:2023年5月24〜26日、幕張メッセ)に出展した西松建設のブースで紹介していたのは、監視・管理クラウドシステム「OKIPPA(オキッパ) 104」だ。10×10×4センチのコンパクトな長方形のセンサーで、その名の通り、センサーボックスを“置きっぱなし”にするだけで、さまざまな用途での24時間の見守りを実現する画期的なサービスだ。
西松建設は、1874年創業の老舗総合建設業者で、いわゆる準大手ゼネコンと呼ばれる。ブース担当者はOKIPPA開発の経緯について、「新規事業を開発する部署を立ち上げるにあたり、建設/土木に近しい領域で、かつ社会課題となっている人手不足の解消につながり、さらに仏UnaBiz SASが提供する省電力広域通信ネットワーク(LPWA:Low Power Wide Area-network)の「Sigfox(シグフォックス)」を活用するという3つの条件から、OKIPPAにたどり着いた」と語った。
西松建設がOKIPPAの販売を開始したのは2018年4月。地球温暖化などの理由で、全国で自然災害が激甚化しており、特に土砂災害を防ぐために傾斜地の監視が重視されていた。 ただ、従来のバラマキ型傾斜監視視システムでは、コスト面の制約でシステムを設置する場所が限定されてしまう。「土砂災害の理由はさまざま。そのため広範囲にわたって、危険と思われる箇所への監視が欠かせない。一方、従来の監視システムを広範囲に設置するにはコストが割高になる。それに各自治体では、インフラ点検の人材も不足していた。そのため、低コストで省人化につながり、多くの場所を監視できるシステムが求められていた」(担当者)。OKIIPPAは、まさにそのニーズに応えるものとして開発された。
OKIPPAには、3軸方向で傾斜の変状を監視する傾斜監視機能が搭載されており、自らが回転することで異常を察知する。2〜16Gの衝撃を感知する衝撃感知機能、温度センサー、GPS機能なども実装し、さらに伸縮計や雨量計、水位計、暑さ指数(WBGT)などの多様なセンシング機器との連携が可能なため、幅広い用途での活用可能性を秘めている。
使用法はシンプルで、任意の場所に設置して電源を入れるだけで、すぐに管理や監視を始められる。現場状況を示すデータは、LPWAの通信規格Sigfoxを介してクラウド上に送信され、閾値(しきいち)を超えた異常が検出された場合、即座にクラウドから管理者のスマートフォンやPCに変状を知らせるメールが送信される仕組みとなっている。
電源にはリチウムイオン電池を使用し、1時間に1回程度の送信頻度であれば、約2年間は電池交換の必要がない。「送信頻度は変更可能で、頻度を下げればさらに電池の寿命を伸ばせる」(担当者)。
これまで一般的だったバラマキ型傾斜監視技術のような基地局や電源設備、配線が不要で、コストも従来の半分以下に抑えられる。そのメリットから、既に全国で1000台以上の導入実績があるという。
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