連載第11回は、産業の枠を超えて広がりをみせる“スマートシティー”の分野で、AIの最新研究を紹介します。
AIやICTなどの先端技術を街づくりにも採り入れることで、都市に内在するさまざまな課題を解決する“スマートシティー”の取り組みがここのところ、業界を超えて活発になってきています。とくに、AIを活用することで、都市における人の流れや交通の状況を、これまでのような人手を頼りにした調査方法に依拠せずに、把握することが可能となりつつあり、スマートシティー推進の大きな力になっています。
一例として、2000年代以降のスマートフォンの普及と機能の発展に伴い、スマホから得られるGPSデータをもとに、人の動きを計測することが行われるようになってきました。下図は、観光情報や防災情報を提供するスマホアプリから得られる人の移動軌跡を可視化したものです※1。新型コロナウイルス流行前後で、人流が大幅に変化したことが見える化されています。
★連載バックナンバー:
本連載では、土木学会 構造工学でのAI活用に関する研究小委員会で副委員長を務める阿部雅人氏が、AIと土木の最新研究をもとに、今後の課題や将来像について考えていきます。
歩道での人の動きなど、詳細な人流の情報が得られれば、さらにきめ細かな都市空間のデザインをすることができるでしょう。下図は、ビデオカメラを設置して、撮影した動画から歩行者の軌跡を測定し、映像に重ね合わせたものです※2。
仮に人の手で映像から歩行者の動きを読み取るとなると、かなりの作業が必要となりますが、AIを活用すれば、個別かつピクセル単位の高い解像度で効率的に把握できるため、下図の人流解析の研究結果では、多くの歩行者の動線が一本一本再現されています。
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