沖縄電力グループは、個人宅の屋根に無料で太陽光パネルを設置し、家主に電力を格安で販売するPPA事業「かりーるーふ」を展開している。かりーるーふは、個人宅の屋根を借りて太陽光パネルを設置し、電力を販売するPPA事業。設備面のサポートはパナソニックが行う。太陽光パネルの初期費用や保守費用は無料で、屋根を貸した住宅には、パネルとともに設置される蓄電池によって災害時にも電力が供給される。これまでに50枠の募集枠に対し、2倍以上の申し込みがあり、人気を裏付けている。
沖縄電力は2020年12月、ゼロ・エミッションへの取り組みとして「2050年 CO2排出ネットゼロ」を宣言。実現に向けた今後30年のロードマップを発表した。
CO2の排出量を減らすには、2つの方向性がある。1つは現在の発電施設が排出するCO2を削減することで、もう1つは再生可能エネルギーの比率を増やし、主力化を進めることだ。
現在の主力となっている火力発電に関しては、沖縄電力でも石油や石炭に比べてCO2の排出が少ない液化天然ガス(LNG)の利用やCO2を出さない燃料への転換を進めている。また、再生可能エネルギーの活用によって電力の安定供給と地球温暖化防止に取り組むべく、風力やメガソーラーといった発電分野で研究を行っている。
かりーるーふは、こうした現状を踏まえ、再生可能エネルギーの導入を確実に広げる新しいアプローチで、沖縄電力は、このかりーるーふを再エネ主力化のための重要施策と位置付けている。
かりーるーふは、個人の住宅に太陽光パネルを無償で設置し、発電した電気を屋根の賃料分を引いた形で安く販売するPPA事業※だ。ユニークに思える名称は、“屋根(ルーフ)を借りる”ことに由来する。「かりー」には、沖縄の言葉で「縁起が良い」や「めでたい」という意味を込めているという。
※PPA事業:「Power Purchase Agreement」の略。利用者に電気を販売する電力会社(電気事業者)と発電だけを行う発電事業者間の電力販売契約。電力会社は、自社で発電する以外にいろいろな発電事業者からも電気を仕入れ、利用者に販売している
かりーるーふでは、屋根を貸す住民側に、設置・運用の費用は発生しない。また、稼働中のメンテナンスやトラブルにも住民側の負担がないことが大きな特徴となっている。あくまで自宅の屋根を沖縄電力に貸して、賃料に相当する安い電気料金で、発電された電気を使えるというわけだ。基本的な契約期間は15年だが、延長の交渉も可能とのこと。
沖縄電力 研究開発部の金城尚吾氏は、「沖縄には水力や地熱など、他の電力会社が利用するような再生可能エネルギーが少ない」と指摘。また、西から東までさまざまな島が点在する独特なシチュエーションであり、「不利な状況の中でのチャレンジが必要」と話す。かりーるーふは、このような状況下で、沖縄電力グループが注力する事業となっている。
かりーるーふの設置とメンテナンスを含む運用を行うのは、沖縄電力グループの沖縄新エネ開発。また、パナソニックが機器やシステムを技術面からサポートする。
かりーるーふでは、太陽光パネルや制御機器の他に蓄電池も設置される。蓄電池の設置は、かりーるーふの事業で沖縄電力側がこだわったポイント。前出の金城氏は、再エネの主力化に向け、「地域に応じた安定供給を寄与していかねばならない」とし、「ただ、太陽光(パネル)を置くだけではなくて、蓄電池もセットにし、防災も見据え、他社に先駆けたサービスとしたかった」と説明する。
かりーるーふの蓄電池は、太陽光パネルで発電した電力を供給線に投入する際の平準化に寄与する。また、平時に電気が余った場合は蓄電池に溜めておき、災害などによって停電が発生した際は、家屋に電力を供給するのに役立つ。
設置される蓄電池の実効容量は、4.5kWh。電力の供給は専用のコンセントを介したものとなるが、冷蔵庫やテレビ、携帯電話の充電などであれば、2日間程度の電力がまかなえる。
毎年、台風が襲来する沖縄では、災害時の停電を気にする人が多い。かりーるーふへの関心は高く、第1回目の募集では、予定の50枠に対し100を超える応募があったそうだ。現在は募集を停止中だが、かりーるーふの設置募集は今後も継続される。
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