深さに関係なく運搬効率が一定、土砂搬送が可能なぜん動ポンプの試験機を開発スマートコンストラクション(1/2 ページ)

都市部では、土地の有効活用として、建物の地下が深くなる傾向があり、掘削工事に多くの時間をかけている。そのため、業界では生産性向上を目的に、掘削装置や技術の能力を高めることが望まれている。こういった状況を踏まえ、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)や竹中工務店らは、掘削工事を円滑に行える新装置を完成させた。

» 2019年12月23日 09時00分 公開
[BUILT]

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、竹中工務店、中央大学は2019年12月9日、世界初だという土砂搬送が可能なぜん動ポンプの試験機を開発したことを発表した。

外部環境から受ける影響が小さいぜん動ポンプ

 効率的な土地利用が求められる大都市圏では、建物の地下が深くなるため、掘削工事に全体工期が大きく左右されてしまう。建設現場の働き方改革が求められている社会情勢もあり、生産性向上を目的とした掘削物搬送装置の効率向上が喫緊の課題となっている。

 従来、大深度の掘削工事は、大型重機のクラムシェルやテルハが用いられている。大型重機には、その重量を支える広く強固な作業台が必要で、ワイヤの長さなどの制約により搬送深さは最大70メートル程度。また、深度が深くなるにつれて、掘削物の運搬時間が長くなり、搬送効率は減少してしまう。これらの重機は地上での運用を前提としているため、海底や真空中の月面などの極限環境で搬送を行うことも困難だという。

腸のぜん動運動 出典:NEDO

 こういった背景から、NEDOは、竹中工務店と中央大学の中村研究室と共同で、腸のぜん動運動を機械的に模倣したぜん動ポンプの研究開発を進めている。腸のぜん動運動は、腸が縦走筋と輪状筋という2種類の筋肉の動きを組み合わせて収縮・弛緩運動を行うこと。

土砂搬送用ぜん動ポンプの小型機(左)と大型機(右) 出典:NEDO

 ぜん動ポンプは、ポンプ単体ユニットが複数連結しており、単体ユニットは、外側の人工筋肉と内側のゴムチューブがフランジで接合され、両者の間に空気チャンバーが形成される構造となっている。このチャンバーに外部から空気圧を加えることで、人工筋肉が半径方向の外側に膨張、軸方向に収縮すると同時に、ゴムチューブが内側に膨張して管路を閉塞する。

ぜん動ポンプの構成(左からぜん動ポンプ、ポンプ単体ユニット、単体ユニットの断面図 出典:NEDO

 ぜん動ポンプは、加圧機構が経路上に分散して配置され、対象物を外部から遮断された状態で搬送する。そのため、外部環境から受ける影響とエネルギー損失が小さく、深さに関係なく搬送効率が一定で、持ち上げられる高さに理論上の限界が無いという。これらの特徴に着目して、世界で初めて建設現場の土砂搬送に適用することを試みたという。

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