竹中工務店ら3者は、一般的に使われている鋼材に比べ、疲労耐久性を約10倍に高めた「Fe-Mn-Si系耐疲労合金」を用いたブレース型の制振ダンパーを開発した。同社が設計・施工を手掛けた愛知県国際展示場の西棟に、制振ダンパー16本を初採用したという。
竹中工務店と、物質・材料研究機構(NIMS)、淡路マテリアは、制振ダンパーの素材として現在一般的に使われている鋼材に比べ、疲労耐久性を約10倍に高めた新素材を使ったブレース型の制振ダンパーを共同開発し、2019年8月30日に愛知県常滑市で開業した愛知県国際展示場「Aichi Sky Expo」に初適用したことを明らかにした。
開発した制振ダンパーは、2014年に「JPタワー名古屋」へ適用したせん断パネル型制振ダンパーを応用してブレース型としたもの。Fe-Mn-Si系耐疲労合金の大型部材を大量生産できる合金製造方法に加え、Fe-Mn-Si系耐疲労合金と鋼材との異種金属を溶接する技術を確立したことで実現した。
制振ダンパーの心材には、鉄を主成分として、高濃度のマンガンやケイ素などを添加したNIMSのFe-Mn-Si系耐疲労合金を用いて、モルタルと円形鋼管で覆っている。構造躯体に力を伝える心材端部の接合部には、NIMSが専用に新開発した鋼材との異材を溶接するための材料(溶接ワイヤ)を採用。溶接時の化学成分変化や組織変化を考慮しているため、鋼材と安定した接合が可能になった。
耐疲労合金の製造は、淡路マテリアが、合金と鋼材との溶接施工管理技術を確立。出来上がった耐疲労合金は、疲労耐久性だけでなく、靭性(じんせい)や耐腐食性にも優れる。パネル型と比べて、ブレース型ダンパーはスリム化され汎用性が高いため、設置のバリエーションが増え、一般建物から、展示会場などの大スパン空間、さらに超高層建物まで、さまざまな空間に幅広く導入できる。今後は、制振ダンパーのバリエーション拡大を生かし、建築分野だけでなく、土木、他産業分野への導入も目指す。
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