大成建設は、キャタピラージャパン製の次世代油圧ショベル「Cat 320」に、独自開発した「自律割岩システム」を実装し、実証実験で割岩の自動化と、有人ダンプトラックとの連携による掘削/積み込みの土工作業を成功させた。
キャタピラージャパンと大成建設は共同で、電子制御が可能な次世代油圧ショベル「Cat 320」をベースに、掘削やダンプへの積み込みなどを自動化する技術開発に着手した。
建設業ではこれから人手不足が深刻化することを見込み、大成建設では、生産性向上の取り組みの一つとして、従来より遠隔操作と自律制御可能な建設機械システム「T-iROBOシリーズ」を開発を進め、2014年には「自律割岩システム」を構築した。
このシステムでは、従来型のラジコン操作ではなく、人はPC上で対象の岩を指定するだけで、建機は搭載しているセンサーによって、自ら移動して作業範囲を判断し作業する。今回、電子制御が可能なCat 320をベースに、この大成建設の技術を組み合わせ、土工事での掘削・積み込み作業の自動化や複数の建設機械との連携をテストした。
油圧ショベルCat 320は、生産性、テクノロジー、燃費、メンテナンスコスト、安全などあらゆる面で従来モデルを越えた次世代の油圧ショベルとして開発。電子制御の油圧回路を備えている他、建設機械のブームやバケットコントロールする半自動施工を実現する「2Dマシンコントロール」、リアルタイムでバケット内の積載重量とトラック積載量をモニター画面に表示する「バケット積載量計測システム(Catペイロード)」の標準装備に加え、CAN(Controller Area Network)による制御にも対応し、自動化を目指すベースマシンに最適として採用された。
CANとは、自動車や建設機械、産業用ロボットなどの機械内部で、各システムやセンサーを接続するためのネットワーク規格。シンプルな回路構成のため、機械各部のセンサー情報の収集統合や機械の動作制御が可能となる。自動化の開発では、CANを活用し、機械本体と外部との相互通信を高速で行っている。
開発の第1段階では、大成建設が開発した遠隔操作と自律制御可能な建設機械システム(T-iROBOシリーズ)のうち、自律割岩システムをCat 320に実装し、2018年6月に作動テスト行った。その結果、Cat 320の本体に改造を加えること無く、自立割岩システムを作動させることが確認された。また、テストで行った直径1.5メートル級の大型岩石の割岩では、90%以上の高い精度での自律作業が実証され、CAN制御機構を搭載したCat 320と自律割岩システムの高い親和性が認められた。
2018年7月からは第2段階として、建設現場で頻度の高い土砂ピットの掘削とダンプへの積み込みを自動化するアルゴリズムの構築に着手した。さらに2018年度中は、熟練工の運転技術をデータ化して、基本的な掘削や積み込み込動作を自動で円滑に動作させることと、普通ダンプトラックとの連携に注力したという。
今後の方針として両社は、「実証フィールドや実際の建設現場で実証試験を行い、AI技術の有効活用も視野に入れてさらなる開発を進め、建設機械の作業自動化および無人化施工技術の確立を目指していく」としている。
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