黒川紀章氏設計の「中銀カプセルタワービル」が取り壊しの危機に、保存のためのオンライン署名活動

中銀カプセルタワービル取り壊しの可能性が再び高まっている。2018年6月に土地の所有者が変わったことによるもので、反対する「中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト」では2018年8月23日、同ビルの保存を求めて小池百合子東京都知事宛に署名活動を開始した。

» 2018年08月29日 06時00分 公開

 建築家の故・黒川紀章氏の代表作の一つとして知られる、東京・銀座にあるカプセル型の集合住宅「中銀カプセルタワービル」。2018年6月に土地の所有者が変わり、現在取り壊しの可能性が再び高まっている。これを受け、中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクトは2018年8月23日、同ビルがカプセル交換を含む大規模修繕の検討なしに取り壊されないよう、東京都庁への支援要請を目的とした署名活動を開始した。

 署名活動は、オンライン署名のプラットフォーム「change.org」を利用して展開。開始から3日間で500人ほどの賛同を得ている。

「change.org」で展開するオンライン署名 出典:中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト

 背景には、2018年6月29日に同ビルの1階店舗・2階事務所・カプセル16個と底地を所有する中銀グループが、CTB合同会社に所有権(土地は共同信託)を売却したことに起因する。CTBは増築された裏のビル2棟も同時に購入し、一帯の再開発を実施したいと、管理組合理事会で報告した。

 8月に入ると、土地の新所有者から「今後、借地権の譲渡を承諾しない」と通達があり、所有者は自由にカプセルの売買ができなくなった。これに反対する所有者が「管理組合へ相談もなく、一方的な通知である」との見解から現在弁護士と協議を続けている。

 中銀カプセルタワービルは、1972年竣工のSRC造(一部S造)による11階建てと13階建ての2棟で構成する集合住宅。総戸数にあたる140ものカプセルが積み上げられた独特な外観とコンセプトは、高度経済成長期を象徴するメタボリズム建築として知られる。施工は大成建設が手掛けた。

中銀カプセルタワービル 出典:中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト

 同ビルは、カプセルを交換することで新陳代謝を繰り返す思想のもとに建てられたが、46年が経過した現在でも交換されたことは一度もない。中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクトでは、黒川紀章建築都市設計事務所の助言を得て、bews/ビルディング・エンバイロメント・ワークショップ一級建築士 事務所とともに、カプセル交換プランを2017年12月開催の管理組合総会で提出。中央区都市整備部とも、カプセル交換に関する下協議を重ねた結果、まだ課題が残されるものの、その実現性について前向きな回答を得ているという。

 なお、2006年には日本建築学会、日本建築士会連合会、日本建築家協会、ドコモモジャパンより、建物の保存を求める要望書が管理組合に提出されている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.