建物のモニタリング状況を見える化、平常時から地震時もFM

東急建設は富士電機と共同で、地震時から平常時まで建物のモニタリング状況を見える化し、建物の健康状態を診断する構造ヘルスモニタリングシステム「4D-Doctor」を開発した。

» 2017年06月01日 06時00分 公開
[長町基スマートジャパン]

建物のモニタリング状況を見える化

 東急建設は2017年5月、富士電機と共同で地震時から平常時まで建物のモニタリング状況を見える化し、建物の健康状態を診断する構造ヘルスモニタリングシステム「4D-Doctor(フォーディードクター)」を開発したと発表した。

 現在、東京都渋谷区の高層複合オフィスビル1棟、大阪府大阪市の高層オフィスビル1棟、東急建設技術研究所内の建物2棟と富士電機東京工場内の建物1棟に同システムを導入。地震時BCP(事業継続計画)支援、中長期の建物更新検討、耐震補強前後における補強効果の確認など、防災ソリューション事業に向けて取り組みを開始しているという。システム運用方法に関するサポートや災害時での人的支援も視野に入れ、導入後も顧客の防災力向上を支援できるよう、地域防災マネジメントとしての展開を図る計画だ。

大震災時のBCP支援イメージ (クリックで拡大) 出典:東急建設

 今後は東急グループ各社との連携を通じて防災ネットワークを強化するとともに、顧客からの要望を組み込んだシステム開発を継続し、新たな価値創造を目指すとした。

富士電機のMEMS型加速度計を活用

 近年、首都直下地震や南海トラフ巨大地震の発生リスクが高まり、大地震災害に備えたBCP活動体制の整備が求められている。同システムは地震発生後、即時に建物の被災度を自動判定し、判定結果を画面表示する他、判定概要をまとめた一次報告書を添付し、電子メールで関係者に発信する。一次報告書には「緊急避難要否」や「建物被災度判定」が明示され、構造専門家以外でも被災状況が判断できるように表示している。

 専門家が閲覧する場面も想定し、加速度波形やその最大値、非観測階を含めた建物全体の最大加速度応答分布、最大層間変形角分布などの情報も報告内容に含めている。拠点建物への災害対策本部設置可否を判断し、管理建物の被災状況把握を迅速に行う。

地震発生時の一次報告書画面例 (クリックで拡大) 出典:東急建設

 また平常時における建物の微小な揺れを観測(常時微動観測)し、建物の状態を常にモニタリングする。建物の固有振動数を取得する観測を毎日数回スケジュールすることができ、地震時BCP支援で取得した地震時の固有振動数も含め、時間を追ってその変化を把握することができる。長期間で見た場合の建物の特性変化を読み取ることで、耐震補強や建替えといった建物更新検討に役立てることが可能となっている。

 同システムの観測システムには、富士電機のMEMS型加速度計「感振センサー」を使用している。感振センサーは地震動から平常時の微動までの加速度を検出できるため、同システムを構築する上で最適なセンサーという。また感振センサーはネットワークハブのPoE給電機能により電源供給するため、設置場所に電源を用意する必要はなく、LANケーブルのみの配線でシステムを構成することができるのも特長だ。

 同システムではセンサーを建物各階に設置する必要がなく、4〜5階毎に設置したセンサーの観測情報から、システム内に構築した解析機能により非観測階の応答を推定する。そのため、システム導入時のセンサー台数を抑え、ハードウェアや配線工事にかかるイニシャルコストを低減する。非観測階の応答推定を行う解析機能については、振動台実験や実観測記録による検証によって推定精度を確かめるとした。

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